私だけの秋桜

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私だけの秋桜

このだだっ広い宇宙で 宇宙の片隅で見つけた 一輪の可憐な秋桜 私だけの 【私だけの秋桜】 うだるような暑さが続く毎日にも関わらず、レイの住むアパートには空気調整機器が備わっていないため、私は水道水をがぶのみする。それだけでは飽きたらず、頭から思い切り水を被る。 「そんな事しなくても涼しいじゃありませんか」 「涼しい訳ないデス。レイは少しオカシイ」 「ふふ。そうかも知れませんね。さぁさ佐藤さん、こちらへ」 「?」 先程から窓枠に危なかしく張り付いていたレイが、満足げな顔をして私を手招く。ようく目を凝らして見れば、レイがいつの間にか持ってきた不思議な形状の器が逆さまに窓枠に取り付けられていた。それは、器と、器に包まれるように中に入っているアルミの小さな玉が触れあう度、硬質な音をたてている。玉から伸びる長方形の紙には、蝶々と呼ばれる昆虫が数匹ほど描かれていた。 「コレは?」 「風鈴と呼ばれる、涼をとるための道具ですよ。日本独自の発明品です。」 「リョー」 「あぁ…涼しいという意味ですよ。」 「どう涼しくなるのデスか?」 「風鈴の奏でる音を聞き、窓から入る風を感じて涼しくなる気がするのです」 「気では無意味でしょ」 「そう言わずに。」 そう言って、レイは自分の座るすぐ横の畳をポンポンと叩き、私に座るよう促す。このような彼の独特のボディーランゲージは非常に好ましく思う。控えめ、いや、何といえばよいのか…私の星には、コレに当てはまる言葉は無い。ニホンゴを借りるなら『奥ゆかしい』『可憐な』とでも表現できよう。 宇宙翻訳機には無い日本語を私に教えてくれた地球人の青年は、ふわりと微笑んで私の行動を待っている。 それだけで、リョーが取れる気がした。
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