赤子

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「俺は‥掟を破る事は出来ないからな。苦しくても、しんどくても‥‥」 「それは違うと思うよ。掟に逆らえない事は分かるけど‥その所為にするべきじゃない。‥‥なぜ僕らが二人でここにいるか知ってるでしょ?」 「チャオは声帯が生まれつき無いんだろ。だから山に‥」 目の前に座っているチャオを見る。気を害した素振りはなかった。 チャオは農民の子として生まれた。兄のソンはどこも欠けず健全に生まれてきた。だがチャオは違った。生まれつき声帯がなく、普通なら生まれてすぐ死んでしまうがチャオは凄まじい生命力があった。何とか一命を取りとめたが、周りは気持ち悪がる人が多かった。両親は最後まで育てきると決めていたが、母方の両親により引き離されてしまった。ソンは妹と生きることへの反対を押し切って決めてロックレイン山のふもとに家を作った。その事に激怒した祖父母が、借金をソン達に押し付けたのだ。 「三年に一度だけ両親が来てくれるんだ。あまり長くはいられないけど‥祖父母の目を盗んで来てるから」 「寂しいか‥」 「いや、寂しくないよ。僕にはチャオがいるから」 ソンはチャオの髪をなでながら微笑む。それに答えるかのようにチャオも微笑む。 そろそろ一つ目の試練を終わらせるか‥ ソンとチャオとはお別れだな。 ここまで強けれ大丈夫だろう。俺も人のこと言ってられないな。 「明日の朝方にロックレイン山に登る」 その言葉だけで分かったように、ソンとチャオは顔を曇らした。
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