三つの試練

ポポ

「バンパイアじゃなかったら死んでたな」
ローズウッドはボロボロに破れた服に、無数の切り傷と痣を見ながら呟いた。
五時間ほど前に、ポポを発見した。思わず身震いしてしまうほどの殺気を放っていて、転けてしまうというミスを犯した。当然音に反応してこちらに振り向かれ見つかる。不幸中の幸いに、ポポは眠っていなかったしお腹もそこそこ満たしていたため、弄ばれるだけですんだ。だが、大型猛獣に追いかけ回され無傷で済むはずがなくこの有様だ。
「ふうぅ。さっさと片付けるか‥やっぱ強いな。ほんとはこんな事したくないのに」
痛みに顔を顰めながら立ち上がる。
出来ること、自分のスキルを使って出来ることは四つ。
・視覚共有‥視覚がある者ならば視覚を共有することが出来る。

　デメリット：死んだものの視覚しか共有出来ない。
　　メリット：視覚があればどんなものだろうが視覚共有出来る。
共有者の視力を0.5マイクロの菌を見えるまで上げ　　　　　　　
る事ができる。　　　　　　　

・超加速‥本来の限界の足の速さを五倍にした速さで走れる。
　　　　 デメリット：超加速は体調により、時間制限がかかる。
　　　　　　　　　　 発動中超肉体強化が使えない。
　　　 　メリット：本来の五倍の速さで走れる。
　　　　　　　　　　 音を一つも立てずに走れる。

・超肉体強化‥本来の肉体の五倍〜十倍強化出来る。
　　　　　デメリット：発動中超加速が使えない。
　　　　　　　　　　　体力を物凄く消費する。
　　　　　　　　　　　解除後の反動が激しい。
　　　　　 メリット：マグマの中でも二時間だけ耐えられ、どんな武器も
　　　　　　　　　　　効かなくなる。
　　　　　　　　　　　筋力がアップする。

・音波傍受‥音波で相手の位置や会話などを特定する事ができる。
　　　　　デメリット：音波との相性が悪ければ、傍受できなくなる。
　　　　　メリット：敵や物の位置が正確に分かる。
　　　　　　　　　　　長時間発動できる。

この四つの中で最も最適なもの。
ポポは大型の猫科猛獣。バランス感覚・瞬発力に優れており、夜目がきく。
最も厄介なのが聴覚だ。
音源の方向や音源までの距離を知る能力があるため、近づけばすぐにバレる。
音波傍受を発動し、ポポの動向を確認しつつ視覚共有と超加速で一気に畳み掛ける。だが、仕留める前に体力が限界迎えるだろうな。
「チッ‥一気に潰すのは無理か。視覚共有で偵察だな」
そう言って、自分の背丈以上ある袋から目を取り出す。
そう、この目は全てローズウッドが殺したヤクザの目だ。
「すまないな‥絶対にお前らの死を無駄にはしない」
ローズウッドは十個の目を取り出すと、視覚共有を施して護符を貼る。
そして、目玉達に命令する。
「ポポの動きがぎりぎり分かる場所にいけ。近づき過ぎず、とう過ぎずだ。
全体が見渡せるように散らばれよ」
『分かりました』
頭の中に直接喋り欠けられる。
これも、護符のおかげだ。護符を貼ることによって、相手から見えなくなり、意思の疎通が出来るようになる。極めつけは、自由に目玉たちが飛べるようになることだ。
この護符は、目玉が攻撃されたりして消えたと同時に手元に戻ってくる。
バンパイアの護符職人自慢の商品だ。
「よし！反撃の開始だ」