不老長寿の研究

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不老長寿の研究

 関東海洋大学に属する新庄の研究室では「不老長寿」の研究をしていた。 研究対象は『ベニクラゲ』  一般的なクラゲは、寿命を迎えたり、敵に襲われて傷ついたりすると死んで海に溶けていく。しかし、『ベニクラゲ』の場合は、死ぬ代わりに「ポリプ」に戻り、通常時と同じように成長して、再び大人へと戻る。  しかも、これはたった1度ではなく、原理的には何度でも。  この『ベニクラゲ』の不老不死の仕組みを解明し、人体に活用することこそが、新庄の掲げた研究テーマであった。  このテーマで書かれた新庄の論文は「不老長寿のメカニズムに迫る」と学会でも高く評価された。  アメリカのサイエンス誌で特集が組まれると、美容業界や製薬会社などからスポンサーの申し入れが相次ぎ、巨額の出資を得た新庄は40歳を前にして教授の座に上り詰めた。 「なんとしてもこの研究を頓挫させるわけにはいかんのだ……」  新庄は打ち寄せる波に目を落としながら小さく呟いた。
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