ひまわりの向くほう

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ある小さな畑に、小さな一輪のひまわりができました。 「あ、お日様だ!」 小さなひまわりは自分に似ているお日様を追いかけ、一日中、お日様のいるほうを向いて過ごします。 「こんにちは、お日様。今日もあなたはとても大きくて暖かいですね。私はここの畑の、おばあさんのくれるお水が大好き。今度あなたもお水を飲んでみませんか?」 ひまわりはいつもニコニコと笑いながらお日様に話しかけていました。 ある日、ある一匹のミツバチがひまわりのもとにやって来ました。 「ひまわりさん、とても嬉しそうですね!」 「こんにちはミツバチさん!嬉しいです、大好きなお日様を見ていられますから。」 ひまわりは嬉しそうに笑ってそう答えました。 それからミツバチは毎日ひまわりの前に来て、話しかけるようになりました。 「ミツバチさんのおかげでお話相手ができて私はとても嬉しいです!」 そうして夏の終わりの頃になりました。 「ミツバチさん、毎日私のもとに来てくれて、とても嬉しいです。でも、私はもうすぐ眠りにつかなけばなりません。」 ひまわりは悲しそうにそう言います。 「ひまわりさん、お別れは悲しいです…」 ミツバチは大きな涙を一粒落としました。 「泣かないで下さい。私の思いは私の種に継がれます。これからは、私の大好きなお日様の昇る方に来てください。眠る直前まで、あなたのことも一緒に見られるように…」 「ひまわりさん、あなたを抱きしめさせてください。そしてこれからも毎日、あなたのもとへ来させてください。」 ミツバチはひまわりに体を寄せ、自分よりもずっと大きなひまわりを抱きしめました。 ひまわりは大きく咲き、それからはお日様の昇る方をずっと向いたままミツバチを待つようになりました。 ミツバチはそんなひまわりと毎日話をし、毎日抱きしめてから巣へ帰っていきました。 夏のおわり、ひまわりは少し縮んでいました。 「ひまわりさん、抱きしめさせて下さい…」 ミツバチはいつものようにひまわりのもとに来るなりそう言います。 「もちろんです。私はミツバチさんのことが好きですから。」 ひまわりは穏やかに笑ってそう答えます。 ミツバチはひまわりにいつものように体を寄せてひまわりを抱きしめました。 それからミツバチはポトリと土に座り込み、そのまま永遠の眠りにつきました。 ひまわりはミツバチの眠った土をじっと見つめ続けました。 悲しげに、 愛おしげに、 ずっとずっと… そして数日後、ひまわりはミツバチのいる土に顔を向けたまま眠りにつきました。 その次の年、おばあさんは取っておいたそのひまわりの、たくさんの種を畑に蒔きました。 畑にはミツバチがよく来るようになりました。ひまわりのもとに来ていたミツバチが仲間に教えていたのです。 そして夏には畑の日のよく当たる場所にたくさんのひまわりが咲きました。 それからその畑は、野菜と黄色のひまわりがたくさん咲く、みんな集まる明るい畑になったのでした。
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