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第1幕―序章
艷やかな漆黒の髪をなびかせ、青年が目を閉じている。殆ど身動きしないせいか、クロライチョウが心地よさげに彼の肩に居座っている。
彼の背後には、此処エデン国において語るに欠かすことはない、有名な時計塔がある。
いつもどおりの喧騒を聞き流し、もうすっかり懐いたらしいクロライチョウを指先でなでていると、けたたましい馬の悲痛な嘶きが耳に劈いた。
驚いたクロライチョウが素早く青年の手から抜け出し、蒼空へ舞い上がる。
どうやら、畑焼きの煙に混乱した馬が前足を高く跳ね上げ、そのはずみで馬車が傾いたようである。傾いた馬車と馬を繋げる紐が馬の体に食い込み、殊更に暴れ始めるも、馬よりも重量のある馬車に釣られて横倒しになる。
その下に青年2人を見つけ、黒髪の青年が彼の異能である光と闇で保護する。小走りで2人の様子を窺う。呼吸は安定していた。
眠くなったのか、数回出る小さなあくびを噛み殺しつつ気を失った2人の青年を肩に担いだ。
「……いつだって、始まりは終わりに繋がる糸だな」
ボソリと、口の端を歪めつつ、わかるようでわからないようなことを呟く。
ゆったりとした足取りで、青年は湿っぽい路地裏にひたりと身を沈ませた。
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