お喋り仲間

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お喋り仲間

 次の日から、駐車場へ通うことが日課になった。不思議なことに、私が行くと、必ず黒猫は待っていてくれた。  ひょっとして、この子も友達がいないのかな? なんて失礼なことも考えた。  人間には、話せないことをたくさん話した。この子は、私の変な喋り方を指摘しない。それが凄く楽だった。  給食で大好きなワカメご飯が出た。算数のテストで90点を取った。テレビで好きなアイドルが歌っていた。  猫にこんなこと話すのは、凄く馬鹿げていると、みんな思うだろう。でも、関係ない。私は、嬉しくて仕方なかったから。  家でも、学校でも、自分の思ったことを、伝えたいことを、口に出せない日々が、ずっと続いていたから。  でも、誰かに見られたら嫌だという気持ちは、あった。思い出したかのように、キョロキョロと辺りを見回す。臆病な自分に、ため息をつくと、黒猫はそっと頭を寄せてくれた。  だけど唐突に、私達の関係は終わりを迎える。
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