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吹き出す感情
いつもの駐車場に差し掛かった。かかとを
上げて覗き込んだけど、黒猫はいなかった。リボンのことを話そうと思ったのに。
理由はすぐに分かった。軽トラックの裏で、私より年上であろう男の子が二人、座り込んでいた。ゲームでもしているのかな。
駐車場に人がいる時は、どんなに会いたいと思う時でも、我慢して、家へ帰っていた。きっと、私が来ないと思って、どこかへ行ったんだ。
……でも、ひょっとしたら、隅で寝転んでいるかもしれない。確認したい衝動が、私の涙を一瞬だけせき止めた。
……いや、我慢しよう。近所の子や、駐車場を使っている大人の人に見られたくない。今日まで、誰にも知られなかった、友達との遊び場。これからも秘密にしたい。
歯を食いしばり、駐車場の横を駆け抜けた。その時、目の前を黒い影が、木枯らしに混ざり通り過ぎた。
それは、見覚えのある影――。
黒猫が、優しい瞳で見つめていた。
堪えていた感情が吹き出した。その姿を見てしまったら、もう抑えられない。
黒猫が立っていた側溝に寄り、一連の出来事を捲し立てるように話そうとした――。
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