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遠い距離
真っ先に黒猫のことが頭をよぎった。ここからおばあちゃんの家まで、新幹線で三時間はかかる。気軽に来られる距離じゃない。
私が唯一心を開ける友達とお別れ。その衝撃が、リボンを頭から叩き出した。
嫌だ……離れたくない。黒猫も一緒に連れて行ければ、そんなことも考えた。でも、言い出せなかった。
体調を悪くしているお母さんに、これ以上負担をかけたくなかったし、自分の欲求を口に出すのが恥ずかしかった。
そして、夜が明けた。お母さんが家へ呼んだタクシーに、簡単な荷物だけ持って乗り込む。大きな荷物は、あとからまとめて、業者の人が送ってくれるらしい。
学校の先生やクラスメートには、別れの挨拶はしていない。目立つのは嫌。お母さんも無理強いはしなかった。
走り出すタクシー。私はお母さんと一緒に後部座席へ乗った。そっと、後ろを見る。アニメやドラマだと、ここで友達が走って追いかけてきてくれたりする。
ひょっとしたら、黒猫が――
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