無慈悲な言葉

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無慈悲な言葉

 当然、誰も追いかけてこない。犬の散歩をする知らないおじさんが、首を傾げてこちらを見ているだけだ。  ……当たり前だよね。私がいなくなるなんて知らないはずだし、それに……友達じゃないし。  座席に座り直し、うつ向いた。そんな私の右肩に、温かい手が触れた。お母さんだ。 「転校先では、友達できるといいね」  できるわけない。本当は分かってるでしょ? お母さん……。 ――  やはり私は変わらなかった。転校初日。自己紹介という名の拷問を強制される。  クラスメートの提案により始められた質問コーナーは、涙を浮かべ過呼吸に陥った私を見かねた担任の女性教諭により、一問目で打ち切られた。  質問は『好きな動物は?』  気がついたら中学生になった。大きくなるにつれ、社交性も身に付く……楽観的に考えた時期もあったが見通しは甘かった。
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