乱入者

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乱入者

 黒猫が前を横切ると不吉。昨日、教室でクラスメートが話しているのを聞いたばかり。  とんだ嫌がらせをしてくれたな。と、頬を膨らませつつ、腰を屈めた。  私の想いなどどこ吹く風、という感じで、黒猫は両手を万歳させながら、大きなあくびをした。  そのあまりに無防備な姿に、思わず笑みを溢してしまった。全く、ふてぶてしい。  その時、人の話し声が聞こえてきた。慌てて立ちあがり、辺りを見回すと、携帯電話を耳に当てながらこちらに歩み寄る中年男性の姿があった。  ひょっとして軽トラックの運転手かもしれない。怒られたりはしないだろうけど、話しかけられるのは嫌。  駐車場の外へ小走りで向かう。男性は、電話に夢中で、私のことなど眼中に入ってないようだった。  ふと、黒猫が気になり、振り返ってみた。男性が、軽トラックの向かいに停まっていた青い乗用車のボンネットに手をつき、笑顔で電話しているのが見えた。いつの間にか、黒猫の姿は消えていた。
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