粉雪

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粉雪

 しばらくの間、黒猫とじゃれ合っていた。好奇心もあって、背中、前足、首、いろんなところに手を触れた。黒猫は、抵抗せずに、目を細めていた。  唯一、尻尾を握ろうとしたら、後ろ足で蹴られた。手加減(足加減?)してくれたのか、痛くなかったけど。  私が手を離すと、今度は黒猫が鼻をすりつけてきた。靴や膝、そして頬へ……。  黒猫は、他の場所へ移動することなく、ずっと私の相手をしてくれた。他の猫友達と遊びに行かなくていいのかな?   それとも、私のことを友達とでも思ってくれてるのかな……そんなわけないか。まだ会って二日目だし。それに、猫と人間で友情なんて生まれないよね。  ふと、耳に冷たい液体が触れるのを感じた。空を見上げる。真っ黒な雲から、白い粉が紙ふぶきのように降り注いでいる。  雪だ。降ってきちゃった。すると、黒猫はひょっこり立ちあがり、駐車場の外へ走っていった。  その途上、一度こちらを振り返り、一声鳴いた。今日はもうお開き。明日また来なさいとでも言うように。
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