何気ない一言

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何気ない一言

 幼い頃から、私には友達がいなかった。否、作ろうとしなかっただけだ。  もともと内気で、話すことが凄く苦手だった。それでも、笑ったり、泣いたり、感情を表現することはできた。  それが変わる決定的な出来事は、小学三年生に起きた。明日から夏休みという時期。私は、日直として、黒板の前で帰りの会を行った。嫌だけど仕方ない。たどたどしくも、伝えるべきことを話し終え、席へと戻ったとき。 「咲良ちゃんの声って変だね。喋り方も変わってるし」  クラスで一番のお調子者の女の子が発した言葉。悪意のない単なる呟き程度の感覚かもしれない。でも、私の胸に、その呟きは根強く渦を巻き続けることになった。  人前で話すことが、嵐の海に飛び込むくらいの恐怖となった。
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