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「お花を食べる鳥、私、見るの初めてっ……毛がツヤツヤで綺麗……」
「珍しい種類なんじゃないかな。僕も、何年も前、一度きりしか見たことがなかった」
エミリオも、リラも、優雅な食事を摂る空の使者を、濁りのない瞳で眺める。
淡い黄の群れはほとんど皆満足そうだが、一羽だけ元気がない。嘴で捕らえた花を飲み込み、力なく翼を動かしながら、なんとか浮いてる状態だ。
「綺麗でしょ? 食事を終えたらすぐ運動しに行くストイックな子達なのよぉ」
のどかな女性の花降らしが、マイペースな歩調で門から降りてきていた。晴れ渡る爽快な青へと帰っていく鳥達に、やはりのほほんと手を振って。
だが、一羽だけ空へ帰れなかった。フラフラなその小鳥は、ピタリと動きを止めた直後に、空とは逆の方向へ引っ張られていく。すかさず背中でキャッチしたロイズに、女性が駆け寄った。
「あらら? 元気がない子がいたのねぇ。どうしたのかしら」
「お腹空いてるのかなぁ? あのお花、ぜーんぜん味しなかったもんっ」
「それはロイズの口に合わなかっただけ。この子はちゃんと食べてたから、空腹で元気がないわけじゃないと思うけど……」
分析するエミリオの隣で、リラが「あっ!」と声を上げた。ロイズの背中が軽くなる。
「この子、ちょっとだけ借りますっ」
「えっ!?」
「すぐ返しますからっ」
守るように小鳥を両手で包み、門の影に隠れるリラ。何をしてるのか見えない中、柔らかい紫の髪が風に揺れる。
主の肩へ帰ろうとするロイズの鼻に、清らかな水の匂いが響いた。
脈打つさざ波は、予感だ。“奇跡”の予感。
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