守りたいもの

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「どんな理由(りゆー)でも、エミリオ様のお顔ぶったのは絶対絶対許さないけどっ……でも……わざと冷たくしてたんでしょ? エミリオ様がお城にいたら危ないから、あんまりここに戻ってこないよーに……」  街で襲ってきたならず者を喰らったルビーレッドの蝶。あの時に気付くべきだった。あれは見せしめでも何でもなく、ただ純粋に、弟を脅かす存在が許せなかったのだと。  森の中で何年間も(あるじ)との聖域を取り囲んできた赤紫の翅達は、見張りでも牽制でもなかった。あの蝶獄の館は、エミリオとロイズを貪欲な食狂いから隠してくれる、この世で一番優しい檻だったのだ。 「……買い被りが過ぎるのではないかな……僕はただ、兄としての責務を果たしたまで……それよりも、僕の方こそ、君に感謝しなければならない……」 「ほえ……? 僕に……?」 「……ありがとう。僕の代わりに、ずっと、エミリオの傍にいてくれて……」  (あるじ)にそっくりな端麗な微笑みが、ロイズにも降り注ぐ。  この人もずっと、たった一人の家族の傍にいたかったんだ。  初めて見えた若き城主の孤独は、鋭利な純銀よりも深く、ロイズの胸を突き刺した。 「それより……エミリオ。あの子を放っておいてはいけないだろう……血は止まっているようだが……大切な友達だろう……?」 「あっ、リラ……!」  激情を奥にしまったエミリオは、伏したまま起き上がらない少女の元へ急ぐ。
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