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更なるアシストのため、ロイズは「ねぇねぇ」と赤いケープを引っ張る。
「あなた、お名前は? なんてゆーのっ?」
「あ。名乗ってなかったね。私、リラっていうの。ドラゴン君達は……」
「僕はロイズ! こっちの、とーってもお美しーお顔と、とーってもお綺麗なお声と、とーってもたおやかなお体と、とーってもお上品な香りでできてる御方は、エミリオ様っ。はぁ、お名前まで麗しゅー……」
「だから……そういうの、困るからやめてって」
主の紹介にだけ気合いを入れるロイズのおでこに、エミリオのチョップが落ちる。「あうっ」と思わずおでこをさするロイズだが、これでも我慢した方だ。むしろ褒められて然るべきなのに。
そんな二人の様子に、リラはくすくす笑った。
「仲良しなんだね。ロイズ君と……エミリオ様」
「“様”なんていらない。あなたには、そう呼ばれたくない」
「じゃあ……エミリオ君。私も、“あなた”って呼ばれたくないな」
「……わかった。リラ」
風がぶつかってくるたび、高潔な花と清廉な水の匂いとが、優しく溶け合う。
まるで中心に太陽が生まれたかのように、ロイズは胸がぽわんと温まるのを感じた。ぽわぽわとした温もりは広がり、全身にまで満ちていく。
「エミリオ君。まずは何を買うの?」
「兄様の結婚祝いを……僕もロイズも贈り物をする機会がなくて、一般的な贈り物が何なのかよくわからないから……色々教えてほしい」
「それは、お兄様おめでとうございます。私もよくわからないけど……贈り物って言ったら、やっぱりお花とかかなぁ」
「それじゃーまずお花屋さん探しましょーっ!」
二人と一匹での、ぎこちないながらの街中お店巡りが始まった。
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