二人と一匹の逢瀬

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「ロイズ君も楽しいよね? エミリオ君と一緒に、色んなものを見て回るの」 「ほひほんっ! ふぉふふぁへふぃふぃほふぁふぁほふぃっほふぁふぁ……」 「ロイズ。行儀が悪いから、ちゃんとゴックンしてから喋って。それと、ロイズが頭に乗ってると重いから、そろそろこっちへおいで」  優雅な所作で差し伸べられた手。  (あるじ)の言いつけに従い、団子をよく噛みしっかりと飲み込んでから、素直な竜は再び笑う。 「エミリオ様と一緒なら、僕はどんなところも楽しーですよっ! エミリオ様のお傍が、僕の一番好きな場所(ところ)ですからっ」  ロイズは元気よく愛しい手のひらに飛び乗るも、「物好きだね」と返すだけで、(あるじ)は動かない。  何処からか、風が、色彩豊かな花びらを運んできた。何の重みも(しがらみ)もない陽気の化身達を、エミリオは黙って見送る。真っ直ぐな従者の想いから目を背けるように。  幼い竜の中に、海に投げ込まれた砂粒のような、もどかしい不安を投じた。深いブルーと淡いグレーの光の奥で彷徨う影が。 「エミ……」 「どうしてそんな寂しそうな顔するの?」  溺れていく粒が、届くはずのない柔らかい風に震える。  しっかりと届いたのは、水の匂い。  ぷくっと片方の頬を膨らませたリラが、エミリオからロイズをひったくった。 「ほえ? リラ? どーしたの?」 「わぁっ。ロイズ君の体、もちもちしてるね」 「そーお? お団子いっぱい食べたからかなぁ」 「それは関係ないかなぁ。ちょっとこう、両手を開いてみてくれる?」 「え? こー?」 「そうそう。偉い偉い。爪がなくてよかった」  ロイズの両手首を後ろから握るリラ。その竜特有のふにふにとした肉球で、「えいっ」とエミリオの両頬を挟んだ。
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