二人と一匹の逢瀬

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 じゃれ合う少年と竜に、リラも目を細める。 「やっぱり仲良しだね。エミリオ君とロイズ君は、そうしてるのが一番いいな」 「……リラにも、仕返し」  ロイズの片手を掴んだエミリオが、その手のひらを、赤いフードの内側に忍ばせる。 「わぁっ。リラもふにふにっ」 「わわっ……や、やめて。恥ずかしいっ……」 「だめ。リラも僕と同じ目に()って」  リラが後ろへ引いても、エミリオは幼い従者の手を離さず、彼女の頬へ肉球をぐりぐり押しつける。  ────楽しい。  重なる手から、(あるじ)の本音が聞こえた。  誰の目にも届かない場所へ心をしまい込んできたこの(ひと)は、ふと、脆く散ってしまいそうな雰囲気を見せる。  そんなロイズの不安に逆らって、繋ぎ止めてくれた。怯えられた船上では堂々としていたくせに、なんてことはない竜の手に落ち着きを失くす少女が。  風を浴びた砂粒が、海に溶けていく。 「も、もうっ! 恥ずかしいってばっ……! 早く、お買い物の続きしよっ」  自分が先にエミリオに仕掛けた悪戯に自分では耐えきれなかったリラが、大きく後ろへ下がった。白い裾からはみ出したショートブーツで、そのまま街中に広がる石畳を駆ける。  「待って」とエミリオも後を追い、その肩へ、ロイズはそっと身を寄せる。  辺りから影が減ってきて、品のいい香りを散らす手が赤いケープを捕まえた時、再びカラフルな破片が迷い込んだ。雨だ。水の粒より軽く鮮やかな、大量の花びらの雨が降り注いだ。
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