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花を喰む鳥
高貴な顔と可憐な顔と無邪気な顔とが、一斉に空を向く。
街と街との繋ぎ目に立つ、アーチ状の煉瓦の門。登れる構造になっているらしく、アーチの最上部にある瀟洒な窓からは、身を乗り出して手を振ってくる二人組の姿が確認できた。
「観光かい? 君達みんな可愛いなー!」
「本当っ。我が家の磁器人形より愛らしいわぁ」
右耳のピアスと短い赤毛を風に乗せるそばかすの男性と、肩に付かないくるくるのオレンジブラウンの髪を被った眼鏡の女性。二人揃ってバスケットを抱えている。
「僕達に、何か御用ですか」
リラを背に隠し、門を真っ直ぐ見上げるエミリオ。冷静な主の顔の前で、更にロイズが両手を広げて構える。
しかし男は「そんな警戒しなくていいよ!」と爽やかに笑った。色も形もバラバラのカラフルな雨を、祝福のように降り撒いて。
「君達に特別用事があるってわけじゃないからさ。街からの提案で、この門を潜るカップル全員に、フラワーシャワーをサービスしてるんだよ!」
「この子達のためでもあるんだけどねぇ」
のほほんと微笑む女性が指笛を鳴らすと、ライムイエローの羽根を急がせて降りてきた小鳥の群れが、豊かな花びらを次々に喰んでいく。
「おいしーのかなぁ……」と興味本位でロイズも一枚齧ってみたが、食感はきわめて薄く、何の旨味もない。
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