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ほどなくして、ライムイエローの鳥が一羽、大きく羽ばたいた。上空の仲間達と合流し、雄大な空を旋回する。高らかな声を上げながら。
「よかった。あの子、もう大丈夫みたい」
門の奥から戻ってきたリラは、元気な右手で鳥達を指し、女性に笑いかける。
「元気が出るように、おまじない、してみました」
「そうなの? じゃああの子が元気になったのはお嬢ちゃんのお陰ねぇ。ありがとう。そんないい子にはプレゼントをあげなくちゃっ。じゃーんっ!」
無邪気な子どものおままごとに付き合ってあげるような口振りで、女性はバスケットから清楚な花冠を取り出した。
「ちょうどね、フラワーシャワーとは別に、お花の冠も用意してたの。冠に使ってる方のお花は、鳥も虫も食べない種類だから安心してね。ってことでお嬢ちゃん、フード下ろしてもらえないかなぁ?」
小ぶりな花びらと清らかな柔いレースだけで構成された、淡い桃色と白が基調の頭飾り。レースの片端には雫の形をしたベビーピンクの石がぶら下がっている。赤いフードから溢れるライラックの髪とは相性がよさそうだ。
だがリラは、首を左右に動かし、おずおずとフードを目深に被った。とても寂しそうな瞳を女性の手元に向けつつも、赤い袖から震えを覗かせて。
あれれ、とロイズは目をぱちぱちさせた。小さな左手をしっかりと守っていたはずのハンカチが、ぞんざいに巻かれてる。
「あの。この冠、僕にいただけませんか」
婉麗な手が、受け止めるように下から花冠に触れた。エミリオの指の腹が花びらの先をふにゃりと摘まむ。
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