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「強すぎない色をベースにまとまっているので、僕の頭に乗せても違和感がないと思います。レースもわりと短いし」
「わぁっ、それいーですねっ! エミリオ様にぜーったい似合いますよぅっ! きゃあっ! 想像だけでわくわくしちゃっ……!」
「ロイズはひとまず落ち着いて」
二つの手のひらを頬にあて、妄想の主と戯れる従者を、本物の手がぺちりと叩く。
「うふふ。わかった。これは彼氏君にあげるねぇ」
「……ありがとう、ございます」
アッシュグレーの頭に乗せられかけた花の輪を、エミリオは手を伸ばして受け取った。丁寧に旋毛を見せて。
フードから手を離さないリラの顔を、女性が「ごめんねぇ」と下から覗き込む。顔の前で申し訳なさそうに両手を合わせながら。
「困らせるつもりじゃなかったんだけど、押しつけがましかったね。こういうの好きじゃない子もいるのに」
「そういうわけじゃっ……私の方こそ、態度悪くてごめんなさい……」
「あはは、そんなことないよぉ。あの子のこと元気にしてくれたじゃない。ありがとう」
満足気に手を振ると、女性は門の内部へと戻っていった。
もう一度、花が降る。顔を上げるロイズだが、男性の花降らしも奥へ引っ込んだらしく、門の窓にはもう誰もいなかった。
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