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「そーだったっ!」とロイズも瞳を輝かせたが、エミリオは首をふるふると左右に動かした。
「こんな可愛いの、僕に似合うわけないじゃない」
周囲にサッと視線を巡らせた後、エミリオは「こっち」と手招きでリラを誘う。
誘導した先は、彩り豊かなサークル状の花壇。葉を幾つも付けた背高な花に囲まれて、未発達な二人と一匹は周囲の視界から遮られる。
そよぐフローラルな香り。密やかな花の隠れ家で、エミリオは赤いケープに手をかけた。
「フードなんて被らなくても、こうすれば他の人にはわからないと思う」
「え……」
たおやかな手が、赤いフードを剥ぐ。
刹那に風に触れた、ライラックの髪から覗く、白い二つの尖り。ロイズが持つそれよりは小振りな、エミリオには生えていない角。
リラの顔が焦り出すよりも早く、その上に花の王冠が落とされた。ささやかな先端は、愛々しい被り物に埋もれ、見えなくなる。
「わぁぁっ。リラ、妖精さんみたーいっ。ねー? エミリオ様っ」
「……こっちの方が、か……顔がよく見えて、いいんじゃない。角もちゃんと隠れる。フードを下ろしたくなかっただけで、本当は欲しかったんでしょ」
「え……え? もしかして……」
自分の左手を優しい両手で包むエミリオを、リラはひどく驚いた顔つきで見上げる。
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