優しい魔法

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「……いつから? いつから……気付いてたの?」 「ゴンドラの上で……この傷を見た時から。血が、ロイズのものと同じ色だから」  ──やっぱり。エミリオ様も気付いてたんだ。  乱れたハンカチを丁寧な手付きで巻き直していく(あるじ)に、ロイズは頬を寄せる。  ロイズも同じタイミングで気付いていた。自分と同系色の血を持つ少女は、精霊ではなく竜の血族だと。姿はエミリオに近いため、純粋な竜ではなく、竜と人間の混血だろうことも。 「……なんだ、気付いてたの……気付いてて……傍に、いてくれたの……」  放心したようなリラの瞳から、ぼろぼろと、涙が滑った。青みがかって透き通る雫。感情のカケラをこぼす小さな顔は、やがてくしゃりと歪む。 「……っ……うーっ……」 「えっ……な、何……何で、泣くの……」  顔を押さえながらその場にしゃがみ込んだ少女を前に、少年も戸惑って目を丸くする。  膝に顔を埋めたリラは、丸めた背中を震わせるだけで何も答えない。 「だいじょーぶっ。ですっ」  珍しくうろたえる(あるじ)の頬に、ロイズはそっと手を添える。“オロオロなさるお姿も、大変(うるわ)しゅーございますっ”。ではなく、“何も心配することはありません”と安心の意を込めて。
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