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麗しき刺客
「あーあ。気配消してたし、ここなら死角も多いし狙えると思ったんだけどなぁ。君、鋭いねぇ」
乾いた拍手。ふざけた称賛。
花のサークルの影から姿を見せたのは、ダークブラウンの髪を後ろで一つに縛り、迷彩のスキニーパンツに長い足を隠した男。研ぎ澄まされたダークブルーの眼光と、煙が立つライフルの銃口を、いたいけな子ども達に悪びれなく向ける。
まだ状況が飲めず唖然とするリラに背中を向け、立ち上がったエミリオとロイズは男を睨んだ。
「僕達に何の用ですか」
「んー? このライフル見てわかる通り、面と向かって言える用事じゃないんだけどねー……それよりさぁ、そこの女の子、さっきデッケー黒橋から落ちただろ? 実はあの時、君にぶつかったのオレなんだよねー」
迷彩柄のグローブに覆われた人指し指が、エミリオの後ろを狙う。
「すぐ助けるつもりだったんだけど……見ちゃった。ゴンドラでの君の“魔法”。君、香血だなぁ? まさか水にまで効果あるとはねー。さぞ極上なんだろうなぁ……いいなぁ。俺も、骨の髄まで味わってみたい」
リラのことを不可思議な種類に当て嵌める男は、舌を出し、音を立てて己の唇を舐め回した。最上の獲物を前にしたハンターのように。
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