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柔らかい背中を、優しい感触が覆う。エミリオの自由な方の手が、ロイズごとリラを抱きしめた。
「……ロイズ……お願い。僕のワガママ聞いて。後でまた好きなだけお団子買ってあげるから」
「本当ですかぁ⁉ わーいっ! ……じゃ、なくて‼ エミリオ様のご命令とあらば、僕は喜んで聞きますよぅっ」
「……ありがとう」
愛情に溢れた手つきで背中をなでられる。
目先の報酬につい浮かれてしまったが、本当はそれだけで充分だ。何も奪わず寄り添ってくれる温もりは、傍にあるだけで従うに値する。
「さ、エミリオ様! 何なりとお申し付けくださいっ」
「じゃあ……今すぐ僕達を空へ連れていって」
「はぁいっ。喜んで!」
愛しい温もりとリラの頭から離れ、周囲の人からも距離を取れるくらいに浮かんだロイズの体は、眩い光に包まれる。徐々に光が弱まり、小さな首を守っていたボルドーのスカーフがエミリオの手の中に落ちた頃、小さな丸みはスマートな巨躯へと変化していた。
「わぁっ……! ロ、ロイズ君、こんなに大きくなれるの!?」
「えへへぇ、すごいでしょー!」
目を丸くするリラに、えっへん、と翼を揺らしてみせるロイズ。大きな体から見下ろす主達は、不思議と自分よりも幼く見える。
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