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「そういう人の体ってね、どんな生き物にとっても美味しく感じるみたい。爪でも、髪でも、血でも、肉でも、骨でも……少し舐めるだけで、どんな怪我でも病気でもすぐ治るくらい元気が出るんだって」
「すごぉいっ! じゃー、リラからずーっとお水の匂いがしてるのも、そーゆー遺伝子だからなのかなぁ?」
「え!? わ、私の体って、そんなに臭うの!?」
慌ただしく自分の腕を鼻に近づけるリラ。ふんふん、と真剣な顔で自分の体臭を嗅ぐその隣から、押し殺したような密やかな声が立つ。バッと腕を下ろしたリラは、顔を真っ赤にしてそちらを睨んだ。
「エミリオ君……笑ってるでしょ」
「ご、ごめん……だって……そんなに鼻の穴を広げなくても……」
「わ、私、そんなに変な顔してた? うう、恥ずかしいっ……」
「変っていうか、か…………カピバラ、みたいで、和んだだけ。安心して。リラからは、いい匂いしかしてこないから」
「ほ、ほんと……?」
「本当。僕のこと信じてくれないの」
「……ううん。信じる」
顔を覗き込んだエミリオの手に、再び自分の手を伸ばして、リラは笑う。頬を染め、彼女自身の感情を滲ませて。
遠くから、甲高い鳥の鳴き声が響く。
「……ロイズの言った通りだ」
「ほえ? 何がですか?」
「人形よりも、もっと…………妖精みたい」
手のひらで鳴る主の声は、花風よりくすぐったくなる温度で耳に溶けていく。
高貴でスリムな白銀の竜と、ローズピンクの小さな竜。手のひらの二人が自分と同じ種族に生まれていたらどんな姿だったか、ゆったりと空を進みながら、ロイズはその優しい“もしも”の世界を想像した。とても愛おしく、ひたすら平和な幻を。
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