砂糖菓子の音色

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 無邪気な追手を何とか振り切り、エミリオとリラが安心して立ち止まった時だった。鈴ほど大袈裟には響かないけれど、小粒の砂糖菓子が心地よくぶつかり合うような、優しいきらびやかな音色(おと)が耳に触れたのは。  いち早く出所に気付いたリラが、前方のショーウィンドウに駆け寄る。 「ねぇ、エミリオ君っ。あれならどうかな? お兄様への贈り物!」  ショーウィンドウの向こうには、手のひらに置けそうなサイズの、横笛を吹く天使のオルゴールが立っていた。穏やかな速度で回っている。 「うん……こういうの、いいかもしれない。入ってみようか」  エミリオがドアを引くと、外まで漏れていた音色が一層元気に迎えてくれた。  ショーウィンドウ越しに見たのと同じ、くるくると回る精巧な天使。猫や魔女を乗せた三角屋根の家の形を模した時計。宝石を乗せた長方形の箱。テーブル別に、それぞれ形の異なるオルゴールがまとめられている。 「あらまあ、随分と可愛らしいお客様ね。いらっしゃい。他には誰もいないから、どうぞゆっくり見ていってね」  カウンターから、柔和に微笑むサイドテールの女店員が出てくる。主達の真似をしてロイズも彼女会釈を返し、改めて商品に目を向けた。
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