砂糖菓子の音色

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「ジュエリーボックスも実用性がありそうだけど、夫婦で眺めて楽しめるものの方がいいのかなぁ……こっちにメッセージ入りのものもあるみたい」 「メッセージは欲しがらないと思う……あ。ベッドサイドランプが付いてるものも置いてある。こういうものなら兄様にも使ってもらえるかも」 「そうなんだね。好みに合う音楽はどんな……」  エミリオの隣で真剣な顔で商品を見回すリラは、ふとある一点を見つめた。  小物ばかりが並んだ一角。花を(かたど)った、クリスタルの髪飾りが並んでいる。 「これ可愛いでしょ? バレッタの形になってるんだけどね、これもオルゴールなのよ」  近くへ来た店員が白い花を裏返すと、花びらの後ろからは小さなゼンマイが芽を出していた。店員の指がそれを回すと、クリアな花が愛らしいメロディを放つ。「すごく可愛いっ!」とリラは一瞬で釘付けになった。 「贈り物としても、普段使いとしても、とても人気のある商品なの。お嬢ちゃんもよかったらいかが?」 「すごく可愛いけど……結婚のお祝いには物足りないかも……」  歌う髪飾りから、名残惜しげに視線を外していくリラ。インテリア向きのオルゴールが並ぶ棚の前へ戻り、再び真剣な顔付きでエミリオへの提案を重ねる。  その間、(あるじ)が何度か小物の並ぶ棚に目を向けていたのを、ロイズは見逃さなかった。
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