22人が本棚に入れています
本棚に追加
くっつけたまま、ロイズは首をひねった。
「どーして? どーして、エミリオ様だけじゃなきゃだめなの?」
「だってロイズ君、エミリオ君のこと好きでしょ?」
好き。ロイズはぱちぱちと瞬きを繰り返す。
主への、当たり前な気持ち。朝も同じ言葉で伝えたのと同じ響きは、リラが放つと、妙に蠢いてロイズの耳と心の深い場所を刺激した。
それが何かを考える暇もなく、ロイズは後ろからお腹を掴まれリラから離される。振り返らずとも漂うのは、上品な香り。
「お待たせ。行こ……どうしたの。ロイズ」
こつん。ロイズはエミリオの額に自分のそれをくっつけに行った。
視界いっぱいに映る主の美貌に、心が簡単に幸福を覚える。
「僕は、エミリオ様にしか、こーやっちゃだめなんだそーです」
「そう。ずっとこのままだとロイズの顔しか見えないから、離れて」
「はぁい」
額を離し、ロイズはエミリオの肩にぎゅっとしがみつく。リラよりも、お団子よりも、手放したくない温もり。この想いは、いつもロイズの中心に居座って、鳥の一歩ほども動こうとはしない。
「ふふ。また来てね。可愛いドラゴンちゃんと、可愛いカップルちゃん」
入った時と同じく会釈して店を後にするロイズ達を、明るい笑顔を振り撒く店員と、穏やかな砂糖菓子の音色が見送った。
最初のコメントを投稿しよう!