砂糖菓子の音色

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 くっつけたまま、ロイズは首をひねった。 「どーして? どーして、エミリオ様だけじゃなきゃだめなの?」 「だってロイズ君、エミリオ君のこと好きでしょ?」  好き。ロイズはぱちぱちと瞬きを繰り返す。  (あるじ)への、当たり前な気持ち。朝も同じ言葉で伝えたのと同じ響きは、リラが放つと、妙に蠢いてロイズの耳と心の深い場所を刺激した。  それが何かを考える暇もなく、ロイズは後ろからお腹を掴まれリラから離される。振り返らずとも漂うのは、上品な香り。 「お待たせ。行こ……どうしたの。ロイズ」  こつん。ロイズはエミリオの額に自分のそれをくっつけに行った。  視界いっぱいに映る(あるじ)の美貌に、心が簡単に幸福を覚える。 「僕は、エミリオ様にしか、こーやっちゃだめなんだそーです」 「そう。ずっとこのままだとロイズの顔しか見えないから、離れて」 「はぁい」  額を離し、ロイズはエミリオの肩にぎゅっとしがみつく。リラよりも、お団子よりも、手放したくない温もり。この想いは、いつもロイズの中心に居座って、鳥の一歩ほども動こうとはしない。 「ふふ。また来てね。可愛いドラゴンちゃんと、可愛いカップルちゃん」  入った時と同じく会釈して店を後にするロイズ達を、明るい笑顔を振り撒く店員と、穏やかな砂糖菓子の音色が見送った。
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