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追いかけっこと、「ありがとう」。
太陽が真上に差し掛かろうとしてる。もう昼が近い。白玉をすっかり消化してしまったお腹が、ゴロゴロと鳴り始める。
へこんだお腹をさすりながらも、ロイズは空腹を堪えた。安らぐ音色に溢れた店を出てからずっと、主がそわそわと横を気にしているから。
だが先に、「いいものが見つかってよかったね」とリラが切り出す。
「喜んでくれるといいね。お兄様も、エミリオ君のお姉様になる人も」
「どうだろう……喜んでくれるかな」
「喜んでくれるよ。エミリオ君がこんなに考えて選んでくれたもの、嬉しくないわけないもん」
「普通の兄弟ならそうなのかもしれないけど……僕は、兄様に好かれてはいないから」
大通りと小道を繋げる、両脇を花のプランターで囲われた小さな白い橋。その硬い手摺に掴まったエミリオが足を止めると、つられてリラも止まる。
「お兄様と、仲良くないの?」
「……多分。僕みたいな弟がいること、兄様は面白くないみたい。父様と母様が生きてた頃はそうでもなかったように思うけど、今は、僕と同じ家で暮らすことすら嫌みたいだから」
雲が流れ、花が翳る。
リラから目を逸らした主の心に、急に氷の粒が降り始めたように感じて、ロイズは黒いストールをぎゅっと握りしめた。
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