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夕食後、30代なかばと思われる両親と 3~4歳くらいの女の子が浴衣姿でゲームコーナーにやって来て一通り見た後、一番奥にあるクレーンゲームの前で足を止めた。
「これはとれないな。」
父親の口から聞き慣れた台詞が出た。
「パパがクレーンゲーム引退して随分経つよね。」
「そうだな。前はゲーセン出禁になるくらいとって一人暮らしの部屋にも実家にも置けなくなって、ついにママの部屋にまで置いてたもんな。」
「元々狭いマンションだったのに、ぬいぐるみが入った段ボールに囲まれて常に引っ越し前みたいな感じで暮らしてたもんね。」
「俺、最低だよな、家賃払えって感じだよ。ま、でもそれで『こんな感じならもう一緒に住もう。一緒に住むなら結婚しよう。』ってなったから結果オーライだな。ぬいぐるみ、オークションで売ったらかなり稼げたし。」
「でもあたし、付き合ってる頃寂しかったんだよ。デートの時、いつもゲーセン行ってたくさんぬいぐるみとって楽しそうにしてるパパを見るのは嬉しかったけど、両手に戦利品が入った袋持ってるから手を繋げなかったし。」
わずかに頬を膨らませる母親を父親は愛おしそうな目で見た。
「そんなこと思ってたの?めっちゃ可愛いんだけど。そういうこと言うと今夜・・・。」
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