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しかしその500円を使っても俺は数cm移動しただけだった。
「美月ごめんな。明日の水族館でもっと大きいベンギンのぬいぐるみ買ってあげるから。」
父親は肩を落としつつ、子供の頭を撫でて言った。
「いや!あのこじゃないとだめなの!うわ~ん!」
「珍しいね。イヤイヤ期、遅れて来たのかな?」
母親は優しく微笑みながら娘を抱き上げた。そんなにも俺を欲してくれているなんて俺の方が泣きそうだった。鼻がないのに鼻がツンとするようだ。生まれてきてよかったと心から思える。
「そんなにあのペンギンがいいなら、あと500円だけやるよ。でも、それでダメだったらおしまい。いいな?」
父親は母親に抱かれた娘に目線を合わせて言う。こくんと頷いた娘の頭を彼は『いい子だね。』と撫でた。
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