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追懐2
一禾とすみれと亜美の3人は高校からの付き合いで、良いも悪いも共に過ごしてきた。
親友と呼べる友人はこの2人だけかもしれない。少なくとも一禾にとってはそうだ。
特に一禾とすみれとは同じバスケットボール部で、放課後も、夏休みなどの長期休暇も練習に明け暮れ、常に一緒だった。
2人ともポジションはフォワードで、すみれが右サイド、一禾が左サイドだった。カットインが得意のすみれとスリーポイントシュートが得意の一禾はいわゆる名コンビで、その名残りが何年も経った今でも健在していると思っている。
ゴリゴリのスポーツ女子2人と、比較的おとなしめのグループにいた亜美は特に交わる要素もなく、放課後、一緒に帰ったり、休日に出掛けたりするほどではなく、学校で雑談する程度の付き合いだった。
ある日、一禾は国語辞典を借りようと前の席に座る亜美の背中をツンツンした。
後ろ手に差し出された辞書を持つ亜美の指は白くその先には上品な薄いピンクに塗られた細い爪先があった。
一禾は思わず辞書ではなく、その桜の花びらのような亜美の指をつかんでいた。
指先をつまみまじまじと観察すると、ささくれもなく甘皮も綺麗に処理されていた。そういえば亜美は将来ネイリストになりたい、と同じグループのクラスメイトと話しているのを聞いたことがある。当時ネイリストという職業が世の中にまだ浸透していなかった。一禾はそれがどんな仕事なのか知りたくなった。
ヤスリで爪を整えてマニキュアを塗ったり、薬剤を使って爪を伸ばすこともできると聞いたときはそんな魔法のようなことができるのかと感動した。
亜美はおとなしそうな顔をしているわりに流行りに敏感なオシャレ女子だったという事を知り、彼女のノリの良さも気に入って急速に仲良くなったのだった。
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