追懐3

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追懐3

卒業後も亜美が結婚するまでは彼女の家にしばしば泊まりに行っていた。温泉観光地に住む亜美の自宅は近隣の旅館やホテルのリネンを引き受けるクリーニング屋を経営している。亜美の顔パスがあれば露天風呂も入り放題だった。 亜美の母親は女友達のように気さくで、一禾に用意してくれた布団で一緒に寝たこともあった。決まってをした。亜美の母親は、肯定も否定もせずただ頑張れとだけ言ってくれた。一禾が失恋して、やけくそで温泉に浸かり湯あたりした事があった。死んだらどうしようと吐きながら泣く一禾に、 「死んだら死んだだ。きっと死んでも楽しいから心配するな」 そう言って背中をさすってくれた。 亜美の母親はあっちの世界をとことん楽しむのだろう。生前そうであったようにいろんな場所を見て回ったりするのかもしれない。 そう思う事で寂しさを誤魔化そうとしていた。 あれから20年と少し、そんな身近な友人の親が亡くなったという事実に戸惑っていた。 亜美の指先は喪服の上でさえ美しく佇んでいた。 葬儀の後も気の利いた言葉をかけてやれなかった。こんな時に役に立てない情け無い自分を責めるかのように言葉数少なめに歩いていく。おそらく隣を行くすみれも心持ちは一緒だろう。 「さーむ! 」 ヒューっとひとしきり強い風に煽られてすみれが首をすくめた。  近くのカフェで暖を取りたいくらいの冷え込みだが葬儀の間ずっと泣き崩れていた亜美を思うと、どこかに寄る気にもならず各々家路についた。
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