深海迷宮

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気づけば何かしら作ってる それは人によって 詩になったり 音楽になったり 絵になったり ちがいはあるだろうけど 作らずにはいられない 業から逃れられない 呪縛だ 見えない鎖で全身を拘束されている 「趣味があるってうらやましい」と 言われたけど 趣味とはちがう 呼吸だ だから深海に深く沈んでしまうと 苦しくて苦しくて死にたくなるんだ だからといってそこで思考を停止させたり 長い長い白昼夢を破り捨てたりするのは 心肺停止と同義なくらい それは終わりを意味するから ずっと、ずっと、 光の届かない海の底で もがいて あがいて のたうちまわってる 時に昔の走馬灯に首を絞められる でもそれすら描かずにはいられない 上手くいかなかったあのできごとを この手ならハッピーエンドにだって 救いようのないバッドエンドにだってできる 「今日注意されたことも、 家に帰ると一回リセットされちゃうんですよね」 そういう頭になれたらいい 自分はいつまでも覚えているから 自分の馬鹿さをこう言われる 「記憶力いいんですね、 頭いいんですね」 そんなわけないだろう ただ、苦しみを何度も何度も反芻するから 強烈な脳内記憶として刻まれるだけ 注意されたことを覚えているのは もう二度と怒鳴られたくないから それでも何度も怒鳴られるんだ その苦しみのはけぐちに 積もり積もった憎しみを 形を変えて書き連ねて セルフセラピーしてんだよ 誰かに無償の癒しを求めるのは 失礼だと思うからね 癒しには代価が必要でしょう? 何もうらやましがられるものなんてない それともあなたは、こんな血を吐くような苦しみを 気が狂いそうな毎日を 欲するのでしょうか 逃れられない海底の泥の中を 永遠に巡り続けるのでしょうか
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