運命じゃない?

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「ごめんね この辺たまにチャラいのいるんだよね」 柊さんが突然抱きしめてくる さっきまでと違うドキドキに戸惑う でも やっぱりいつもの柊さんの柔らかさに戻ってほっとする 「柊さん おしごとは?」照れ隠しに柊さんの胸を両手で押し返しながら たずねる 「あぁ 俺残業中だったから すぐに返してもらえたんだ」 やわらかい笑顔にドキドキはおさまらない 「だってぇ せっかく偶然にもミウちゃんに会えたのに もしかしたら運命かもしれないし このまま帰したくないじゃん?」 そういって私の手を当たり前のように握る  横を通り過ぎる人が私たちを見ていく ちょっと恥ずかしいけど なんだか幸せ 「俺も賄い食べたし ミウちゃんもご飯すんだから どうしよう」 そういって少し考えてから 「少し散歩しようか?」と私を覗き込んだ 「柊さんお仕事の後で疲れてないですか?」 「ミウちゃん優しいね でも俺は大丈夫 少しでもミウちゃんと一緒にいられるならね」 ほんとに柊さんは 女の子が喜ぶ言葉をたくさん知ってて それをさらっと口にする これ全部本心かなぁ?喫茶店での柊さんを見ているから なんか営業用なのかな?とか勘ぐってしまう ていうか 世の中にこんな王子様みたいな男の人いるんだなぁ と 他人事のように思ってしまう 「ミウちゃん?大丈夫?」柊さんの問いかけにハッとする いけないいけない 自分の世界に浸ってた 「は はい」 「じゃ いこ?」 そういって柊さんは私の手をつないだまま歩き出した 知ってる道だけど なんか違って見える それは学祭で上がったテンションがそのままで高揚してるからなのか それとも 柊さんという今までにないほど素敵な彼氏と歩いているからなのか たぶん どっちもなんだろうなぁ でもやっぱり不思議 何の目的もない 何の会話もないのに ただ彼氏と歩く なんて今までだったらあり得ない おなかいっぱいだからゆっくり歩いてくれるその歩幅もありがたい どこまでも至れり尽くせりの柊さん 「ミウちゃんのこと ちょっと聞いてもいい?」 「い いいですけど」 「いやそんなにおびえなくても 変なこと聞かないから」 可笑しそうに笑う柊さん 「例えば 誕生日とか 好きな食べ物とか」 そういった時に駅前の三角公園についた 「少し座ろっか」 柊さんの提案は いつも私にジャストミートする 「はい」 駅の自販機でお茶を買って二人で座る 柊さんの距離感にはいつもドキドキする これはきっと“恋人の距離”と自分に言い聞かせるけど むちゃくちゃ近くに柊さんを感じる 「私の誕生日は6月です」緊張を紛らわせるためさっきの質問に答える 「そっか じゃぁ俺がお祝いできるのは来年からだね 何日?」 「6月28日です」 「え?俺も 俺11月28日」 柊さんはとっても嬉しそう ちょっとした偶然なのに私もすごくうれしくなる それに柊さんは お祝いできるのは来年と言ってくれた そんなことでもうれしく感じる  「じゃぁ柊さんのお誕生日はもうすぐですね」 「うん」 「あの 私も柊さんのお誕生日お祝いしたいです もし予定とかなければ」 「ほんと?予定ないし 楽しみにしてる」 「でも 私 柊さんのことまだよく知らないので もし柊さんが行きたいとことか やりたいことあったら教えてもらえると嬉しいです」今まで彼氏にこんなこと聞いたことないな なんか柊さんとは肩の力を抜いて話せる 「じぁあ リクエスト考えとく」 「お手柔らかにお願いします」 あぁ なんか元カレを引きずってるのかな?もし体を求められたらどうしよう とか 考えてしまう まだ出会ってすぐなのに… 「わかった ミウちゃんに俺をプレゼンするチャンスだしね」私の心配をよそに 柊さんはそんなことを言う 「柊さんて面白いですね 自分の誕生日なんだから 欲しいものとか 食べたいものとかじゃないんですか?」自分をプレゼンするって…と思わず笑ってしまう 「俺がほしいのはミウちゃんの気持ちだから 」柊さんが真剣な声で言う 「そのためには 俺をわかってもらうのが大事じゃん?」 この人は…ほんとにいつもほしい言葉をくれる 「でもさ 本音言ったら ミウちゃんの時間を一人占めできるのが嬉しいのかも 俺ってあざといなぁ」 「それ自分でいいます?」 照れ隠しでそう言ったけど そんなこと言われたら 女の子は夢中になっちゃうよ お願い そんなことは私にしか言わないでほしい 「誕生日にミウちゃんと二人きりで過ごせるなんて最高じゃん」 私も嬉しい でも二人きりってことは …展開もあるってことなのかな?やだな 私 ばっかり気になってしまう 柊さんは違うって やりもくじゃないって信じてるけど 不安もある もう私かなり柊さんのこと好きになってきてるから…体だけっていうのはいや 柊さんはどんな気持ちで言ってるの? 私がいるだけでいいってどういう意味? 「今日は遅くなっちゃうし帰ろっか?近くまで送ってもいい?」 柊さんがお茶のふたを閉めて立ち上がる 柊さんの声に私も立ち上がって 「平気です すぐそこなんで」という 「家知られるのいやならいかないけど ほんと近く?平気?」 なんかお父さんみたいに聞いてくる ほんとに心配してくれてるんだなってわかる 「ふふ ほんとに 駅の裏手なんです 明るい道ですけど」 眉を寄せて私を見ている柊さんに 「じゃぁ 送ってもらおうかな」と根負けしてしまう そういうと心底安心したように笑顔を見せてくれる ほんと過保護だな 何となく 不安を振り払うように 今度は私から手をつないでみる すると 驚いたように私の顔を見たあと すぐに強く握り返してくれる柊さん かなり二人で歩いたのに 『もう少し一緒にいたい』と思うほど家が近くに感じた  この出会いが 本当に運命でありますようにって思いながら 柊さんの手をしっかり握った
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