彼氏の誕生日

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日差しに暖かさは感じるものの 風は冬の冷たさを運んでいる11月も後半 柊さんの誕生日はあっという間にやってきた その日は10時に待ち合わせをした 柊さんの誕生日なのに 何故かうちの前まで 迎えに来てくれるという 待ち合わせの時間にアパートの前で待っていると パステルカラーのおしゃれな車が近づいて来て 停車する 「お待たせ」 「柊さん」 柊さんが車も免許も持っているとは予想してなかったから 凄くびっくりした  「良かったら助手席どうぞ」 なんだかうれしい 彼氏の助手席 憧れのやつ 「良かった ほんとは後ろにのったらどうしようってドキドキしてたんだ」 柊さんはそう言ったけど 柊さんの助手席を喜ばない女子は 8割 いや9割がたいないはず  「柊さんお誕生日おめでとうございます 今日はよろしくお願いします」 考えてみたらちゃんとデートするのは初めてかも  「ありがとう 俺こそ今日はがっつり俺に付き合ってもらって 俺のこといろいろ知ってほしいし ミウちゃんのことも教えてほしいな」 なんだか柊さんが言うと 妙に色っぽくてエロいです(笑)それにしても まんまと柊さんにドはまりしてる自分の惚れっぽさにあきれてしまう 「じゃ 前に話してた 野外美術館に行こう  あっこれミウちゃんの分ね」とドリンクホルダーのコーヒーを指差した ホントに至れり尽くせりで 申し訳なく思う  「ありがとうございます」 私がそう言うとニコッと微笑んでから 車をだす 思わず見とれてしまう 「ミウちゃん見すぎ」 「あ ご ごめんなさい」 「そんなに運転してる俺かっこよかった?」 からかうように言われて恥ずかしい 「かっ かっこいいのはいつもです」 なんだか悔しかったので 勇気を出して言い返してみたけど これはこれで恥ずかしい 「ホントに?ミウちゃんあんまりそう言うの言ってくれないから 俺自信なかったんだよね なんとなく俺に押しきられて付き合ってくれてるのかなぁとか だから素直に嬉しい」柊さんくらいの見た目で この性格なら もっと自信持ってると思ってた リップサービスだとしても 私も嬉しい 「柊さんやさしいし 女の子のこと凄くわかってるし もっと自信満々なのかと思ってました」 「言っとくけど 俺プライベートではぜんぜん女の子と話さないし 優しくもないよ」 「え?」 「職場の子にも数少ない女友達にも『愛想悪』とか『彼氏がほしくても俺はない』とか言われるからね」 「そ そうなんですか?」 「うん あんな風に声かけたのも ミウちゃんが初めてだし 蓮見さんにもミウちゃんといるときの俺『別人だな』って言われた」 「そうなんですか?」 「うん 俺もわかんないけど なんか初めて会った時から『特別だな』って感じたんだよね 誰でもいいわけじゃない ミウちゃんは特別に見えたんだよ なんか運命感じちゃうよね?ちょっとスピリチュアル的で怖い?」 私は大きく首を横にふる コーヒーを一口いただく 暖かい 気持ちがほどけていく 「私も結構 『運命』とか信じるほうなんで」 「ほんと?じゃ俺にも運命感じる?」ちょっとふざけたように言う柊さん 「私前にも話したけど 告白されるの初めてで」 「そういってたよね 俺にとっては意外だけど」 「柊さんに始めた会った時 私彼氏に振られたばっかりで」 そういって ハッとする 私彼氏になんて話してるんだろう 「あっ!ご ごめんなさい こんな話」 慌てる私に 「じゃぁやっぱり運命だったのかもね」と柊さんは言う 「絶妙なタイミングだし」運転してるから前を向いたままだけど 柔らかい表情をしている 「おれはミウちゃんに会えてよかったとおもうよ」 「わたしもっ!私も柊さんに声かけてもらえて 彼女になれて良かったです!」思わず声が大きくなってしまう 「ふふ! 良かった そんな前のめりになるほど好きになってくれて」柊さんに笑われてはずかしくなって コーヒーを口にしてごまかす 「さ そろそろつくよ」
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