彼氏の誕生日

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食事はどれもおいしくて ほんとに満足だった ほんとに柊さんと味の好みが一緒なのかも と思ってしまう 「満足ですって顔だね」 「はい ほんとに幸せです」 「よかった ミウちゃん時間まだ大丈夫?」 「はい」 「じゃ もう少しだけ付き合ってくれる?」 そういってお店を出る そして 柊さんのお誕生日なのにお支払いは当たり前のように柊さんがすませている 「ごめんなさい 柊さんのお祝いなのに 私甘えちゃって」 「いいの 俺はミウちゃんに一緒にいてもらうことが最高のプレゼントだから 」 そういって柊さんは車を出す  すぐに目的地に着く 駐車場? 「ここですか?」 「うん」 そういって 私を見る 「ここ俺んちなんだけど ミウちゃんがいやじゃなかったら 少し寄っていかない?」 そういわれて ハッとする もう 覚悟は決めてきた どうしても無理ならちゃんと断ろうって 流されてするのはダメって 決めてきたけど… どうしよう もう少し一緒にいたい でも 彼氏の家にのこのこ上がり込むってことはOKてことだと思わせてしまう 「そんな固くならないで いやならいいんだよ」 そういうと 柊さんは後ろの荷物から 今日買い物した雑貨屋さんの 袋を取り出して 「このマグカップ」と言ってシンプルなグレーとクリーム色のペアのマグカップを出した 「お揃いにしたんだ 一個もらってくれる?」 そんなの選んでたんだ 「もちろん おうちで使ってもいいし ミウちゃんがいいなら俺んちで使ってくれてもかまわないんだけど?」 いつになく まっすぐで真面目に聞こえる柊さんの言葉 いたたまれなくなって 「私も!私も柊さんにプレゼントあるんです!」 と話を逸らす そしてバックから小さな袋を出して柊さんに渡す 「あけていい?」 「はい」 「アームバンドだ あとハンドタオル」 前にレストランで袖が邪魔って言ってたから これならって思ったんだけど 「いいね むっっちゃいい」 「なんか 子供じみたプレゼントでごめんなさい」 でも柊さんは すぐに腕にはめてみてすごく喜んでくれてる 「なんかいいな これなら仕事中もミウちゃんと一緒にいられるみたい まぁ『ミウちゃんにもらったもの』なら何でも特別なんだけどさ」 そういって無邪気に笑ってくれる 「やばいな 帰したくなくなる」 車内に流れる沈黙 そっと私を見る柊さんの柔らかいまなざし これってこのままキスしちゃう流れだよね いいの?でも断ったら嫌われちゃう?自然とうつむいてしまう 「ねぇミウちゃん 俺のことこわい?」 柊さんの問いかけに顔を上げる 「あの 柊さん 私」 ちゃんと言わなきゃ 怖いわけじゃない でも 「私 初めてなんです!」 「え?」 「あの えっと その 男の人とそういうの…」あぁぁぁもう言ってて恥ずかしい もっと言い方があるだろうに といろいろグルグル考える でも次の言葉が見つからない 「え?あ 初めてって…」柊さんも戸惑ってる 考えてみたらまだ何かされたわけでも誘われたわけでもないのに 何言ってるんだろう 柊さんが私としたいと思ってるかどうかもわからないのに! 「ち 違うんです!」いや違わないけど  「柊さんがそういう人だとか それを期待してきたわけじゃないんですけど」 もう言えば言うほどやばい女になっていく どうしたらいいのか 次の言葉を探していると 「俺の…男の人の部屋に彼女であるミウちゃんが うかうかついていくのは 心配ってことだよね?」そう柊さんがとても柔らかい声で言う 「そりゃそうだよね 彼女が彼氏の部屋に行って『そんなつもりじゃなかった』なんて普通は通用しないもんね しかも誕生日だし」 そういって自嘲気味に笑った 「ごめん 俺がうかつだった」なぜか謝る柊さん 「そりゃ俺も男だし 今日はミウちゃん俺のために服を選んで化粧して髪セットして 香水だって選んでくれたんだもん 全部が俺のためのミウちゃんと部屋に二人きりだったら 『なにもしない』なんて言葉に責任もてない」 柊さん… 「今だってあわよくばキスしたい そう思ったしね ミウちゃんは勘がいい」 そういって 私の頭をポンポンする 「キスしたら止められなくなるかもしれないし 部屋連れ込んじゃえばこっちのもんだし」 ちょっとの部分を見せる柊さんにドキッとする 「ごめん ほんとに」 そういって柊さんは運転席のシートにどさっと体を預けて 前を見る いやだ嫌われちゃう…
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