彼氏の誕生日

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「はぁ…」柊さんのため息に 鼓動が早くなってしまう 「ごめんなさい」せっかくの誕生日をしらけさせてしまう 「謝んなくていいよ」もう一度柊さんは深く息を吐く 「俺 ミウちゃんはそんな軽い女じゃないって思ってるし 俺もミウちゃんのことそんな軽く考えてないよ そりゃあんな感じで声をかけたけど 一目ぼれだったんだ 初めてだよ こんなに『そばにいたい』って思ったの」 「…」一目ぼれの感覚は自分が一番よくわかってる 「だから ミウちゃんのこともっと知りたくて 俺のことも知ってほしくて いろいろミウちゃんにしてあげたいことも ミウちゃんとしたいことも 全部ストレートに伝えるしかなくて」私もいつもそうだったな 「でもそれをミウちゃんが受け入れられない時は ちゃんと言ってくれるのはうれしいよ だって俺ミウちゃんのこと全部はわからないし いやだって思ってるのに我慢されたり スルーされんのもヤダ」 柊さんは 体を起こして私を見る 「こんなこと言うの変だけど 俺やりたいだけだったら女には困んない それに今だってミウちゃんのこと無理にでも部屋連れてって…いやここで無理やりするくらい簡単だよ」なんだかいつもと違ってちょっと怖い 「ごめん 怖がらせるつもりなかったんだけど」 「私こそごめんなさい せっかくの誕生日に」 「いいよ」 そういうと柊さんはいつもの笑顔に戻って 車のエンジンをかける 「送るよ」 いつもと同じ優しさだけど 少し距離感を感じる 家の前まで二人とも黙ったままだ 「ありがとうございました」 とまった車の助手席で 柊さんを見つめてお礼を言う 「こちらこそ ありがとう」 そう言ってくれるけど前を向いたままの柊さん 車から降りて 「あの また会ってくれますか?」 なんてわがままな質問だろう 少しの間があって 「また連絡する」とやっぱり私を見ずに答えた 「おやすみなさい」 そう言って車のドアを閉めると 静かに車は発進した やっぱり ながされてしまえばよかったのかな?ちょっと悲しい 彼氏の誕生日は終わった 『柊と 蓮見』 やっちまった  無理やりとは思わなかったけどさ あんなかわいい彼女を見て 『ヤル気おきない』男なんているの?完全に下心なかったとは いえないけど 部屋に呼ぶなんてうかつだったなぁ 『振られたばっかり』って言ってたけどもしかしたら 関連で振られたのかも だからあんなにおくびょうになってたのかな? 「何1人で打ちひしがれてんの?」 「蓮見さん」 「昨日デートだったんじゃない?柊が誕生日に休みとるなんて 雨でも降らないか心配だったよ」 「超絶いい天気でしたよ日ごろの行いいいんで」 「どの面が言うのよ まぁ彼女が特別っていうのはよーくわかるけどね」 「ねぇ 蓮見さんもうミウちゃんの友達(あのこ)とやったんですか?」 「え?」蓮見さんが目を見開く まぁ真昼間っから休憩室でする話じゃないか 「もしかして なんか失敗した? まさか柊がそんなはずないよね?」 なんか言い方に悪意があるんですけど 「いや 失敗じゃないんですけど」 「まさか我慢できなくて無理やり…!」 「んなわけないいじゃないですか!ミウちゃんに嫌われたくないし」 「柊が女に嫌われたくないなんて冬だけど 北海道に砂漠できるんじゃない?」 いちいちとげとげするなぁ 「俺もうしたよ まぁ タイミングもあるし 別にそれなしでも一緒にいたいけどさ なんかふみちゃんとそんな雰囲気になったらどん欲に求めちゃってさ   “ガキか” ってくらい溺れちゃって 何やってんだろうね俺」 へぇ 蓮見さんでもそんなこと思うんだ 「でもさ 真田さんのあの顔にあの体なら 同い年くらいの男子にはたまらんだろうね」 「蓮見さんミウちゃんのことそんな目で見てたんですか?やめてください」 「いや ただ気を付けたほうがいいのかなって 彼女無防備だし ていうか逆に 柊はあの体に何もかんじなかったわけ? 俺は柊が初めてか声かけたときカラダ目的かと思ってちょっと引いたよ」 「そんなわけないじゃないですか!」 「そうだよね やりたいなら 柊ならもっと軽そうな女いくらでもひっかけられるもんね」 「いや もうそういうのないんで ていうか ミウちゃんねらわれやすいですかね?」 「隣の駅の大学とは結構交流あるみたいだよ 何があったか知らないけど 冷却期間なんて考えてたら オオカミの群れが隣の駅からなだれ込んでくるかもよ」 「!!!」急いでミウちゃんにLineする ♯今日ご飯食べいこ? 「焦りすぎでしょ おもしろ」                       『柊と蓮見 おわり』
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