だって好き

2/2

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「お邪魔します」 思い切ってお願いしてみて 初めて入る柊さん(かれし)の部屋 近くのお店でテイクアウトしたお弁当をいただく アパートとは思えないほど広くておしゃれな部屋だ ダイニングテーブルに行こうとしたら 「こっちで食べよ」 とリビングに通される ほんとに1人暮らしかと思うほどの大きめのローテーブルに素敵なカーペットが敷かれている 「すぐあったまるからね」 床暖完備とか贅沢なお部屋だなぁ でも 当たり前だけど柊さんの香りがする 言われた通りすぐに足元が温かくなる 「ジャケット預かるよ 座って」 至れり尽くせりだ  「ウーロン茶とコーヒーしかないんだけど」 「あ じゃウーロン茶で」 すぐに柊さんもテーブルに着く 横に座られて緊張する 「乾杯」柊さんとグラスを合わせる 「素敵なお部屋ですね」お世辞なしにそう思う 「もう5年くらい住んでるかな?でもね」にっこり笑って 「この部屋に女の子が来たのはミウちゃんが初めてだよ」 「え?」 「だからお揃いのマグカップがキッチンにあるのも初めて」 あ この前のマグカップ ダメだ 柊さんといたらドキドキがいっぱいになる 「ミウちゃん俺はね この部屋にミウちゃんのものが増えたら幸せだなって思う」真剣な目で見られて動けなくなってしまう 「まぁ とりあえずに腹ごしらえかな」 そういって笑って袋を開く どれもおいしそう 自然とにやけてしまう 「まぁ今は飯には勝てなそうだから 食べよ」 いただきます 食事っておいしい物に越したことはないけどやっぱり誰と食べるかってことも大事かも 元カレと食べた食事って味気なかった気がする 「前の彼氏は高校の先輩だったんです 隣の駅の大学に行ってて」 食後にコーヒーをいただきながら 思い出して話す 「こんな話柊さんにするの可笑しいですよね でも聞いてほしくて」 私は 元カレと友達の話を聞いてしまったこと もったいぶられたって 思われたこと 結局愛されてなかったこと そのタイミングで柊さんにあったこと 吐き出すように話した 柊さんは黙って聞いていてくれた 「ミウちゃんはそいつのこと好きだった?」 「わからないんです 一目ぼれして 一緒にいたら幸せだって思えて でも 先輩の好きな物ばっかり追いかけて先輩のことしか考えてなくて あんなに大好きで彼女になれてうれしかったのに 今考えたら 楽しい思い出なんて一つも思い出せないんです」 「そっか」 柊さんはそのまま黙ってしまう 「たぶんさ ミウちゃんも そいつのこと好きじゃなかったんじゃない?」 少しの沈黙のあと 柊さんが言う 「こんなこと言ってごめんだけどさ よくある『恋に恋して』みたいなやつだなんじゃない?」 そういわれたら そうなのかも… 「でもよかった」 「え?」 「ミウちゃんがそいつに本気で 体まで全部許しちゃわなくて」 フワッと柊さんの香りに包まれて 後ろから抱きしめられてることを感じる 「ミウちゃんが自分を大事にしてくれててよかった」柊さん… 「もちろん 俺がミウちゃんの初めてになれるから それも嬉しい」ドキッと心臓が高鳴る たぶんわずかに体が固くなったんだろうな 「警戒しないで 俺別に焦んないから」 そんな私の気持ちを悟って柊さんはそういってくれる 「まぁ 俺はいつでもOKだけどね」 茶目っ気たっぷりの柊さん 「ねぇ ミウちゃん」 「はい?」 「俺のこと好き?」 突然の問いかけ ふと顔をあげると 柊さんはとても切ない顔をしていた 「もしかして俺に押しきられてなんとなく付き合ってない?」 たまに柊さんはこんなふうに自信を無くすみたい 不安そうな目になる 「確かに初めは柊さんの勢いに押されてたかも」えっ!と驚く柊さんをかわいいと思う もっと私に夢中になってって思ってしまう 「でもね 今は自分でも怖いくらい柊さんにはまってます」 そう言うと 柊さんがうれしそうになる 「柊さんのこと 大好きです」 ちゃんと自分の気持ちを伝えられた 柊さんと一緒にいると安心できるし もっとくっつきたくなる それに柊さんといるときの自分が好き それは柊さんがくれる自信 「今日は帰したくないなぁ」 なんだか今日の柊さんはかわいい 「あっ もちろんなにもしないって約束する」なんかその必死さもかわいい 「あの はぐとキスまでいいですか?」 思いきってきいてみる だって私だって好きな人とは ねぇ… 「はぁ 小悪魔だな」え?なんで? 「いいよ はぐとキスだけね」 初めてのお泊まりは 大事にされてることがよーくわかった一日だった
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加