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『柊の初めて』 十代は程よくやんちゃで 初めての女は少し年上でいろいろ手取り足取り教えてもらった 若かりし頃のあるあるだ 血気盛んな時代に『好き』だと言ってくる女を抱きまくった 俺に言い寄ってくる女は大抵俺をそういうやつだと思ってたから、本気になって体以外を求めてくるやつも少なかった まぁ中には『私だけのものになって』系の女もいたけど それに答えてやることはしなかった 最低な男だった けど友達もいたしバイトもあった 彼女を作ったりふつーにデートをしたりもした ホストをやってた時があって人気もそこそこだった そこの店長と仲の良かった蓮見さんと出会って 蓮見さんの知り合いの喫茶店にスカウトされる ホストに限界があることを感じていた俺は そこで働くことを決めた そのうち生活も落ち着いてなかなかの好青年になった(笑) 喫茶店もレストランに変わり 正社員にしてもらった そのころ蓮見さんがカフェをやるというので オープニングスタッフとしてお手伝いをすることになる そこでミウちゃんに出会えた 多分十代後半のミウちゃんはベンチで足をバタバタさせたり空を見上げたり 子供みたいでかわいくて 目を奪われた 多分こんな子たくさんいるんだろうけど なぜだかミウちゃんには特別な気持ちがわいて仕方なかった これ理屈じゃなくて『』とか感じてしまうほどだった はじめは警戒されたけど どうしてもあきらめきれなくて 今まで培ったすべてのノウハウを駆使して 最短で彼女を俺のフィールドに誘い込んだ 彼女の願いは全部かなえたくて 『Hはしたくない』という要求だって飲み込んでやった だってミウちゃんとならくっついてるだけでも ご飯食べてるだけでも 全然満足だったし お泊りさせても 我慢できたし むしろ 無理やりやってミウちゃんに嫌われるほうが怖かった こんな気持ちになったのは 初めてだ 初めて部屋に女の子を呼んで 初めてお泊りさせて 初めて女の子の手料理を食べた セックス以外は全部初めて あんなにとろけるキスも初めて 自分でも笑えるくらい 夢中になった でも ミウちゃんはどんどん色気が出てきてもうフェロモンダダ洩れになってる そんで初めてあんなに欲した 『体も全部俺のものにしたい』こんな気持ち初めてで戸惑う でもミウちゃんを怖がらせたくない せっかく距離を開けたのに 驚いたことにミウちゃんから迫ってきた 「できるだけ優しくしてください」馬鹿だなミウちゃん そんな顔して懇願されてもそれは逆効果だよ 「ごめん それは わからない」だって到底無理なお願いだから 俺は その日初めて 自分の欲しいものに自分の気持ちも欲望も注ぎ込んだ 意識を飛ばしてしまったであろう彼女に願う 「ずっと大事にするから お願い離れないで」 初めて切に願った               『柊の初めて』 おわり
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