初めてのクリスマス

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「いらっしゃいませ」 ほどなくして柊さんが来る 「あの おすすめでっていう頼み方できますか?」 小さい声で言うと 「かしこまりました」 と周りを気にする私にウィンクしてオーダーを通しに行く柊さん やっぱここの制服の執事感がたまらん 眼福です 窓から入る夕日を眺めていると  「お待たせしました」と柊さんが温かいミルクティーを運んできてくれる 「ごゆっくりどうぞ」会計に必要なタグに一枚紙が挟まってる ?なんだろうと思って 開くと “今日レストラン終わったら会いたい” と書いてあった もう!Lineでもいいのにこういうことするとこ柊さん 特別感出されると恥ずかしくて でもうれしくなる 私もペーパーにメモをする “連絡待ってます” おいしいミルクティーを堪能してレジに立つ  当たり前のようにレジには柊さんがいる お会計と一緒にメモを渡す 自分でもしたくせに私からもらったメモには驚いて すぐに満面の笑顔になる 「ありがとうございました」 「ごちそうさまでした」 何でもない 客と店員を演じる お店にはたくさんの女の子たち もしかしたらこの中に柊さんに恋をしてお茶しに来てる人がいると思うと少し心が痛む でも私は誰にも柊さんを渡せない それも事実 モールで買い物しようと 一度お手洗いで鏡をチェックした 外に出ると 「ミウちゃん」と声をかけられる 「柊さん」仕事が終わっておいかけてくれたんだろうな 「お直しして どこいくの?」こんな細かいことにも気づいてくれるのはうれしい 「せっかく出かけたのでクリスマスの雰囲気を堪能しようと思って」 「ほんと?」 「はい ただのウインドウショッピングです」 「よかった」 いや 柊さんがいるのにほかの目的なんてありえないでしょ 「あ!こういゆう時期ってナンパ多いらしいから気を付けてね」 「?私が?」 「そう ミウちゃんかわいんだから」 「は はぁ」 柊さんも相当フィルターかかってるなぁ  「俺もう行かなきゃ 気を付けて 早く帰るんだよ」 「はい 頑張ってくださいね」 「うん じゃ 夜楽しみにしてる」 「はい 行ってらっしゃい」 「あぁ いいね 『行ってらっしゃい』って じゃまたね」 急ぎ足でレストランに向かう柊さんを見送った ほんの少しでも柊さんと話せたことに大満足だった 家で軽く夕食を済ませて テレビを見る どれもクリスマス特番で気分は盛り上がる 私ってホントに雰囲気に飲まれやすい 麻莉から地元の駅前の大きなツリーの写メが送られて来た 短大にあったのより大きそう ふみはもうバイト終わったかな?蓮見さんの眉間のシワを思い出す  ヴゥゥゥ そんなことを思いめぐらせているとスマホが着信を知らせる 「ミウちゃん?」 通話を押すと めいっぱい明るい柊さんの声 「お疲れ様です もう終わったんですか?」 「うん クリスマス当日はそこまで忙しくないから」 「そうなんですね」 「今からさ ミウちゃんち行っていい?」 「はい」 「10分でいく」 「気を付けてくださいね」 そういって通話を切る クリスマスに彼氏に会えるなんてうれしいな ちょっと いやかなり浮かれてしまう
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