新しいカフェができたんだって

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新しいカフェができたんだって

気持ちは引きずっていたけど 安田先輩とは何となく 会う気がおきなくて しばらくは こちらから連絡しないでいた それで気付いたこと いつも私から連絡してたんだなって… 先輩から何の連絡もないまま 一か月くらいたった 音信不通の先輩から 突然Lineが来た ♯ごめん別れよう たった一言だったけど 肩の荷が下りた気がした 恋愛の終わりっていつもそう わかっている  それでも 悲しくて悲しくて 泣きたいだけ泣いた 悲しい歌を聞いて夕焼けを見て 泣きたいだけ泣いた こんな時一人暮らしはつらくて でもありがたい 結局丸二日 何もする気がおきなくて 学校もさぼってしまう 「おはよう」 三日目の昼にようやくキャンバスの門をくぐる 「いやもう昼だから」 麻莉と同じ授業 麻莉は先に教室で席を取っておいてくれた 「少しは整理ついた?」そう聞きながら テキストから私に視線を移した麻莉が 「うわっ!ひどい顔 これ終わったら少し何とかしよう」 と言って化粧ポーチを私に見せた 「ありがとう」 短大のテラスでふみも合流して アイシングと少し濃いめのアイメイクをしてもらう 腫れぼったいまぶたを何とか隠した私を眺めて 「うーん ちょっとましかな?」 そういって麻莉は私の頭をポンポンと叩く 「ありがとう」 「どういたしまして」 麻莉がニコッと笑う 「ねぇ ショッピングモールに新しいカフェができたんだって 知ってた?」 麻莉に言われて記憶をたどる そういえば サークルの先輩に聞いた気がする 「今度行ってみようよ 気分転換になると思うよ」 麻莉の気づかいに素直にうなづく 「ふみも誘おう」そう言うと 「そだね」と麻莉は返してくれた 何日かして 3人の時間が合いそうなので ふみにもカフェの話をしてみる 「…あぁ うん」いつもなら『いいねぇ いこいこ』と乗ってくれるふみが めずらしく何となく歯切れが悪い 「なんか都合悪い?」麻莉が聞くと 「大丈夫だよ みうに元気出してもらいたいしね」 といつものふみに戻った 「ちょっとおてあらいよっていい?」 モール入ってすぐの洗面所でふみが立ち止まる 「うんいいよ」 私も一緒に入ったけど ふみはトイレじゃなくって鏡に向かって髪型を整えただけだった 何ならメイクも直してる 何となく気合入ってるっていうか こんなふみめずらしいな 洗面所出る時も「ふう」と一息履いている 「大丈夫?」そう聞くと 「うん 行こう」といつものふみの笑顔を見せてくれる モールの中のカフェとは思えないほど個性的でレトロな雰囲気の もはやカフェというよりはそう呼びたい店内には 若い女の子のお客がたくさんいてにぎわっていた ギャルソンエプロンのちょっとこじゃれた店員さんが入り口付近に立つ私たちに向かって軽く会釈すると 「いらっしゃいませ3名様ですか?」と尋ねてくる 「はい」ふみが答える 「かしこまりました 奥のお席へご案内いたします どうぞ」 と言って 私たちを促した 「なんか執事みたいだね」麻莉が小声で言う 私は『確かに』と思って 小さくうなづいた 「ご注文お決まりでしたら こちらのボタンでお知らせください」 席に着くとこれまた昭和感あふれるチャイムを案内された 「ここ店員男しかいないじゃん」麻莉の言葉にハッとして周りを見すと 確かに店員らしき人は男の人しか見当たらない 逆にお客さんはみんな女の子たちみたいだ そんなことを思っていると まだチャイムを押してないのに 「いらっしゃいませ お越しいただけたんですね」 と声をかけられてびっくりする 振り向くとふみの横に背の高い眼鏡の男性が立っていた 「あ はい…」 ふみは少し戸惑ったような笑顔で答える 「お知り合い?」麻莉が至極当然の質問をする 「う うん あとで話すね」ふみは曖昧に答える 「失礼しました ごゆっくりどうぞ」 眼鏡の店員さんは 何かを察して ふみに目配せすると静かに下がっていった その雰囲気は鈍感な私でも 『この人ふみのこと好きなんだ』というのが わかった 「どういうこと?」 麻莉がにやにやしながら聞いてくる 「実はさ こんな時のみうには申し訳ないと思ったんだけど あの人にこくられたんだよね」 ふみは実に申し訳なさそうに 告白した 「まだ 返事はしてないんだけど 『モールにカフェを出す』って言われてて」 「へぇ」相変わらずにやにやの麻莉 「混雑してるし 気づかれないかなって思ったんだけど…ね」 「なるほど だからここ来るの渋ってたんだ」そういう麻莉にうなずくふみ 「でも ふみいつもより気合はいちゃってるじゃん」 私も思わずふみをつんつんする 「まぁ あんないい男にコクられたら 悪い気はしないよね」麻里もふみをつんつんする 「二人でつんつんしない」照れ隠しなのかふみはちょっと怒ったふりをする 「電話とかLineはしてるんだけど ちょっと年上だし なんかいやな感じしないからさ…」なるほど ふみも付き合ってもいい感じなのかな 「でも まだよくわからないからさ二人には言わないでいたの ごめんね」 きっと私にも気を遣ってくれてたのかも 「そっか まぁ なんかあったら言ってよ 協力もするし」 ね?と麻莉に同意を求められて 私も笑顔で うん とうなずく 「でも ほんと女の子理想の“メガネ男子”だね」 「うん」私たちの誉め言葉に ふみはなんだか照れ臭そうだ 「それにしても 店員さんみんなイケメンで驚くね これはお客がみんな女子なのも納得だよね」麻莉の言葉に私も店内を見渡す 確かに アイドル並みの店員さんばかりだ 「なんか 緊張しちゃうね」 「はは みうらしい感想だね」
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