元カレ

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元カレ

冬は日が傾くのが早い 「じゃ また明日学校でね」 今日は蓮見さんは早く上がったみたい 1号店の店長が 今日はお店お休みだから お手伝いに来てるんだって ふみの肩を抱いて歩く蓮見さんはほんとに嬉しそうだ 「じゃ 私バスだから」麻莉もバス停に走ってく 歩いても帰れるけど 暗いからバスを使うみたい 私は駅のほうに向かって歩き出そうとする 「みう? みうだよね?」呼び止められて反射的に振り向く 「やっぱりみうだ」振り向くと ちょっと前のことなのに もはやその声では思い出せなかったほど記憶に埋もれていた 元カレ… 「安田 先輩…」 やだ 柊さんのお店の前なのに… 「久しぶりだね なんかきれいになった?」 なんだろう 先輩からこんなこと言われるなんて付き合ってるときにはなくて その時なら きっと嬉しかった言葉のはずなのに 今は1ミリもときめかない 確かにイケメンだしおしゃれだし10人いたら7人くらいは“かっこいい”と思うほどのルックスの人だ でもむしろ今は柊さんに見られたくない この人と話してるところを 「ご無沙汰してます」 「何々?固いね?」 一緒にいた友達は 先にモールに入っていった 「何してたの?」 そういって距離を詰めてくる 好きだったはずの先輩の香りも 気にならないどころか 少し嫌悪感さえ感じる 「あ もしかしてこのカフェ?店員さんイケメンぞろいだって聞くもんね」この人こんなに話す人だったっけ? 「俺に振られて まだ立ち直れない感じ?」 「え?」 なにいってんだろ?予想外の発言に思わず先輩と目を合わせてしまう 「だから カフェ(ここ)でイケメン探しでもしてた?」 は? なんだか本格的に距離も近いし 勘違いしすぎて 気持ち悪い 「なんかさ みう雰囲気かわったよね」 肩に手をおかれて 『怖い』と思う 「まだLineブロックしてないでしょ?連絡頂戴よ 今ならまだ俺も大丈夫だよ」 肩に置かれた手が滑るように私を包み込んでくる 悪寒が走る あんなに好きで こんなことしてほしかったはずなのに 「先輩 悪い冗談辞めてください」 「は?」予想もしなかった私の言葉に先輩は素直に驚く 「私たちもう別れたんですよ?」しかもあんたが振ったんじゃん 「だから まだワンチャンあるよってこと」 「私は ないです」私の毅然とした態度に先輩は声も出ない でもすぐに自分を取り戻して 「もしかして なんか怒ってるの?」 とんだ勘違いだ もうだいぶ前に吹っ切れてる 「いえ 怒ってないし気にしてません だから離してください」 抱かれている腕を外そうとする こんなとこ柊さんに見られたくない その時私の襟ぐりが少しずれて 先輩がキスマに気づく 「え?お前?…」先輩が目を見開くその視線を見て私も見られたことに気づく 「離してください」 「お前俺と別れた後 やったの?」めんどくさい展開 「もしかして?ワンナイト的な?なんだよ なら俺でも良かったじゃん」 なんだか意味不明な独り言を言う先輩 普通彼氏できたの?とかじゃないの? いやそんなこと今はどうでもいい さらに覗き込もうとする先輩を 必死に振りほどく 「やめてください!」少し大きめな声が出る しまったお店の前なのに と思った時には遅かった 「お客様!」静かだけど重みのある声が響く 振り向くと やっぱり柊さん お店の制服着てるから 『店員さんの顔』してるけど 視線はドライアイスみたく冷たい 「なんだよ」少しひるむ先輩 「すいません この子嫌がってるみたいなんで それにこんなとこで 辞めてもらえませんか?」柊さんの声が静かに告げる 「あんたに関係ないじゃん」 そういわれて柊さんはそっと先輩に近づき 「人前でかっこ悪いことしてんじゃねーよ」と小さくいった 「…っ!てめぇ」 先輩がそういった時 「安田 早くしろよ」待ちきれなかった先輩の友達が先輩を呼びに戻ってきた 「みう またな」しゃーなしと言った感じで小さく舌打ちをして 先輩はモールに入っていった 「大丈夫?」優しい柊さんの声に泣きそうになるのをこらえる 「はい ありがとうございます」 「お客様少し奥で休まれてください」他の店員さんも お店の中のお客さんはあまり気づいていなかったようで 店内を通って バックヤードに案内された 
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