バレンタイン

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ふみや麻莉も気を付けてくれてて あれから先輩に会うこともなく季節は二月 女の子にとっての一大イベント バレンタイン 私は柊さんの部屋で ホットチョコを作る準備をして 柊さんの帰りを待つ ガチャっと玄関が開く 「お帰りなさい」居間から玄関に抜ける短い通路を思わず小走りで出迎える 「はは ワンちゃんみたい」そういって柊さんは抱きしめてくれる 「お疲れ様」そう言った後 柊さんのコートのポケットの包みに気づく え? チョコ?だってお店のルールでお客様からはもらわないって… ちょっと悲しくなってしまう 私を見て 「あ これ」と柊さんがぽっけから取り出したそれには ハートのカードがくっついている じっと柊さんを見つめて声が出せない でもにこにこしながら柊さんはそのカードをひっくり返して見せてくれる 『with love 蓮見』と書いてあった 「…!」 「気持ち悪いだろ? スタッフみんなに配りやがって」 ぷっ!思わず笑ってしまう 「でも ミウちゃんにやきもち焼いてもらえたから よしとするか」 はっ!恥ずかしい やきもち焼いちゃった 「俺はミウちゃんだけだから」 「…あ ありがとうございます」 「さぁてと お風呂入って ミウちゃんのチョコを堪能しようかなァ あるよね? そのために今日一日頑張ったし むちゃ早く帰ってきたんだよ」 そういって柊さんはバスルームに消えていった ホットチョコを用意していると 鼻歌が聞こえてくる 「はーさっぱりした」いまだになれない湯上りの柊さん 眼福すぎる… 「さ ミウちゃん」 柊さんがリビングのカーペットにドカッと腰を下ろして おいでおいでする マグカップに入ったホットチョコと かわいくラッピングしたリップクリームを持って隣に座った 「ホットチョコかいいねぇ」 柊さんはフーフーしてすぐに口をつける 「こっちは?」 「開けてみてください」 包みをほどいて中からリップを取り出す 「お いいねぇ」 「唇カサカサって言ってたので…」 「うん ミウちゃんとキスするのにカサカサだとやだなって これでたくさんキスできるね」耳元で言われてあたふたする 「え?…え」 「もう ほんとかわいい」からかわれた? 「でもほんと ありがと」 有言実行で柊さんはすぐに唇を合わせてきた 「ほ ホットチョコも 温かいうちに…」余裕な柊さんとは正反対の私 「あぁ ミウちゃんも飲む?」 「あ じゃぁ 一口」と言ってマグカップに手を伸ばすと 柊さんがマグカップを取り上げて自分で飲んでしまう 「イジワル」 「ははごめんごめん はいどうぞ」 今度こそ マグカップを受け取り一口口に入れる 甘くてあったかくておいしい 自画自賛 すると柊さんが 「あ ミウちゃん口の端にチョコついてる」と言った 「いや そんなはず」気を付けて飲んだつもりだし 「ここ …」そう言って唇を親指でぬぐうようにした そしてすぐに 顎を持たれて  「まだとれない…」と言って柊さんの唇で私の唇の端を軽くかみつくように舐められる 「あ…」 それはもうチョコじゃない 柊さんの舌が私の唇をなぞったりはんだりしながら 深く深く私を奪っていく
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