バレンタイン

2/2

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
柊さんから私の中に甘い香りが入り込んでくる ホットチョコなのか何なのかわからないくらい 思考を溶かして私を溺れさせていく 柊さんにつかまっていないと 崩れ落ちてしまいそう 「ミウちゃんだいじょうぶ?」 ぼやける視界に移る柊さんにうなずいて答える 「ミウちゃんチョコよりずっと甘いね」 言葉も声も香りも 全部が私を溶かしてダメにしていく 私の全部が柊さんに反応して熱くなってしまう 自分でも驚くような 甘い甘い声が漏れてしまう 「柊さん…」やっとのことで大好きな人の名前を口にする 「ん?」 「だい…好きで…す」もう気持ちがあふれ出してどうにもならない 「ごめんミウちゃん」 え? 「俺のほうが好きだから」 ほら 柊さんはずるい… 「おはよ」 柊さんの声で目が覚める 「…おはようございます」 「あの ごめん」 「どうしたんですか?」 「なんか 勢いに任せていろいろむちゃくちゃしちゃって」 なんかその言い方とても恥ずかしいのですが… 「あ あの 全然大丈夫です」 何が大丈夫なのだろう 自分で言ってておかしいと思う 柊さんが手鏡を私に向ける 「ちょっと やりすぎた」 顔を上げない柊さん 鏡を覗き込むと鎖骨の付近に3個のしるし これはマフラーかハイネックだな 「ごめんね」柊さんが犬なら尻尾も耳も完全に垂れてしまっている 上目遣いで私を見る そんな顔されたら何も言えない 「とりあえずマフラーあるので」と笑顔を作る 正直 人目を気にしなければ とてもうれしい柊さんの 「今日提出物あるって言ってたよね?学校いける?」なおも申し訳なさそうに聞いてくる  あ そうだ 今日くる教授に出すレジュメがあったんだ 冬でよかった 露出少なめの服でも 問題ない 「はい これだけ出したら 今日は帰ってきます」 そういってバックにファイルを入れた 一緒に朝ごはん食べて 柊さんはカフェに 私は学校に出掛ける ふみは今日講義ないって言ってたし 提出すんだら早く帰ろ そう思っていたけど 教授のところで友達何人かがいて話し込んでしまい 昼を超えてしまう 学食で軽く食事して 柊さんの部屋に足りなくなったものを買ったりしてたら夕方になる  ピロン♪スマホが鳴ったので確認すると柊さんからだった ♯お疲れ様今どこ? #お疲れ様です 買い物してました ♯用事があってレストランに寄ってる ♯近くなんで私も行ってもいいですか? ♯どこ? ♯レストランまで1.2分です ♯いいよ待ってる 荷物をリュックに入れてレストランに向かう 用事もすぐ終わるみたいだし お仕事の邪魔したくない ♯ついたので 前の自販機のとこにいます そう メッセージを送る 日がだいぶ傾いてきてる 平日でも夕方は人通りが増えている 「あれ みうじゃん」 背筋がぞ話っとする声 「先輩」なんでこんなとこ?友達と3人で道の向こうから歩いてくる先輩 ちょっと待ってて、みたいに友達に言ってこちらに向かてくる 「一人?何してんの?」周りを見てそう聞いてくる 「どうしてここに…」大学からも駅からも遠いのに… 「サークルの飲み会いくんだ みうも行く?」 「いえ」 「そういえば みうはなんでここいんの?買い物?」 「人待ってるんで 失礼します」 「え?逃げんなよ」肩をつかまれたひょうしにマフラーがはらりとずれてしまう 「…!みう お前」 先輩の視線が首元に刺さる 「…っ!」もう 見られたくない人に見られる ほんとこの人タイミング悪い それは隠したいとかそういうんじゃなくて になりそうだからだ
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加