学園祭

1/5

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ

学園祭

後期最初で最大のイベント 学園祭のシーズンが来た 短大生って2回しか学祭を体験できないから 思いっきり楽しもう と テニスサークルは気合が入っていた 「毎年フリーマーケットやるから 品物集めと値付けと店番を決めるよ」 ということで 「このサークルこんなにメンバーいたんだ」と思うほど 人が集まった サークル単位で出店するのでサークルはいってない子が 手伝いもしてくれるみたい テニスサークルは伝統的にフリマやってるから 先輩が手際よく色々決めてくれて サクサクと会議が終わった 「あぁおなかすいたね」 解散後1年生の中でそんな声がちらほら  「ご飯行く人ぉ」 その流れでこうなる 私も今日はみんなとご飯行こう 「はーい」そう思って手を挙げる 8人くらいで近くのファミレスで夕飯を食べる みんなで食べるご飯はおいしくて楽しい あっという間に2時間くらいたってしまう 「また明日ねぇ」 解散して一人で ショッピングモールの前を通り 信号待ちをしていると 「ミウちゃん?」 と後ろから声をかけられる 振り向くと 「やっぱりそうだ」と笑う背の高い男の人 一瞬『誰?』となったけどすぐに気づく 「(シュウ)さん…!」 「わかんなかった?私服だしね」 お店と違ってとてもラフで帽子をかぶっていたので正直わからなかった 前髪もおろしてるし…なんか…ちょっと ドキドキする… 「ミウちゃん?」 思わず見つめてしまった私を柊さんが不思議そうにのぞき込む 「…っ!」近い! 「この前はどうも」やっぱなんか軽い 「きょ 今日はお店は…」 「今日はもうお仕事は終わりだよ ミウちゃんは?」 「が 学校の帰りです 友達とご飯行ってて」 「はは そんなに怖がらないでよ」 思わず身構えてしまった 「そっか ご飯まだなら誘おうと思ったのに」 いや 急に2人で?それとも社交辞令? 「ミウちゃん全然お店来てくれないしぃ」 いやホストかよ! 心の中の声を押し殺して曖昧にほほ笑む 「俺のこと嫌い?」 ぐっと顔を近づけてくる もう!何なのこの距離感 「俺ミウちゃんのこと何も知らないから お店に来てくれないと会えないじゃん?」 なんだか私の心を見透かすみたいに語り掛けてくる 「連絡もくれないしさ」 「す すみません」 悪くないのに謝ってしまう 「お客と店員って関係はフェアじゃないよね」 ん? 「ミウちゃんが会いに来てくれなかったら 俺はミウちゃんに会えない」 何を言ってるのさ 「何言ってるんですか だいたい柊さん私のこと何も知らないのに なんで会いたいんですか?」 「え? だから知りたいんだよ 知りたいなって思っちゃうんだよねなぜか」 「え?」 もう信号は3回も変わっている 「だめ?」 こんなイケメンにこんな近くで こんな表情で言われたら 断れる女子は少ないだろうな 私も思わず その瞳に堕ちそうになる 『ダメ いや』と言ったら私たちの関係はこれで終わるの? 私はまた自分の気持ちに正直に次の出会いを求めたらいいだけなんだけど… でも… 「ちょ ちょっと待ってください」 そういってスマホを出す すると 柊さんもスマホを出して周りも照らしそうなくらい明るい笑顔になった 「はい」 そういって柊さんは当たり前のようにLineのIDを交換しようとする 私もあわてて柊さんに合わせる その瞬間視界が閉ざされてふんわりと包み込まれた 一瞬何が起こったのかわからなかったでも ふんわりと香るカフェのにおいに すぐに『抱きしめられてる』と理解して かつてないほど恥ずかしくなった 「ちょ ちょっと 何してるんですか!」 こんな街中で たとえ少しひかりの届かない場所だとしても まだ人通りのあるところで…! 「あ ごめんね つい」 ついじゃない! でも 私は気づく 柊さんのにおい 好きかも カフェの香りに交じって ほんのりと鼻をかすめたその匂い それは きっと柊さんのにおい 言葉とは裏腹に 『もっと嗅いでいたい もう少しこうしていたい』 と思ってしまう 「これで いつでも連絡とれるね」 そういって何事もなかったようにウインクする柊さんに ハッとして我に返る 「じゃ じゃあもう遅いので帰ります!」そう言って タイミングよく青になった横断歩道へかけていく 「あ ミウちゃん」 背中に柊さんの声が飛んできたけど 恥ずかしくて振り返れない 「またね!」 と柊さんの声が町の雑踏の隙間から聞こえた
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加