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わたしが家に着くのとお父さんが帰ってくるのはほとんど一緒。
玄関で出迎えて、買い物袋をチェックするのもすっかり習慣になった。ちゃんと野菜や果物も買っているのは、多分お母さんの教育のおかげかな。
この一年で、お父さんの料理の腕はめきめきと上達したと思う。焦げ臭いお味噌汁やぐちゃぐちゃの煮物がテーブルに並ぶ回数がめっきり減った。お父さんは「まだまだお母さんには及ばないなー」なんて言いながらご飯を食べる。
実は、お父さんの料理してる姿、結構好きだよ。口にしたら喜んでくれるかな?
じっと見つめていたら、照れたように頭を撫でてくれた。へへへ、嬉しい。
夕飯後。
片付けを済ませてソファーでくつろぐお父さんの膝めがけて飛び乗る!
一日頑張った人にはごほうびが必要だってお母さんも言ってた。
わたしが甘えていれば、お父さんの寂しさを少しは軽くできると思うから。
お父さんはビックリした顔。でもすぐ笑顔になって頭を撫でてくれる。お母さんより固くて大きな手。前はお母さんにべったりだったから、あんまり撫でてもらうことがなかった手。今では大好きな手だ。
「また少し重くなった?ちょっと食べ過ぎなんじゃないか?」
ぺしっ。
レディになんてこと言うの!?でりかしーがないよっ!
…たしかに最近体が重くなったような気が…。うん。気のせい気のせい。
「ごめんごめん。」
そう言って今度はお腹を撫でてくる。
やめて~、そこは弱いのっ!くすぐったいよー!
そしてまた頭を撫でようとするけど、その手はするりとかわしてソファーのクッションに座る。お母さんにもらった、お気に入り。
「君はいつもそこだね。」
そう言うお父さんの目は優しくて、寂しそうだった。
わたしとお父さんの間に、ひとり分のすき間。
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