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こんなはずじゃなかった。
ケーキの箱を抱えてベンチに座り、もう1時間はこうしている。
恋人の誕生日。
柄にもなくサプライズなんかしようと思ったら、これだ。
浮気されてた、というよりも俺が浮気相手だったのだろう。
ドアを開いた時の戸惑った表情。『迷惑』って、くっきりと顔に書いてあった。
「ごめん、今日は帰って。」
ドアの隙間からアイツはコソコソとそう言った。
バタンと音を立てて閉まったドアの向こうから声が漏れ聞こえる。
「だれー?」「勧誘!新聞の勧誘だったー」
ドア、薄いんだな。
「新聞かぁ……」
はは……と無理に笑ってみたら、余計に虚しさが増した。
そもそもサプライズをしようとなんて思ったのは、気持ちが離れていると感じたからなのかもしれない。
ま、離れてるも何も最初からなにも無かったのか。
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