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あの綺麗な月の日に再会してからどれくらい経っただろう。 「さとーさんも走ったらいいのに。」 「俺はいいよ。散歩で充分。」 「見た目が若いからってそんなこと言ってるとすぐ老いますよ。」 「こら。」 肩を軽くパンチすると、藤巻くんはキャッキャと楽しそうに笑った。 特別約束をしているわけじゃ無いけれど、俺は夕飯の買い出し帰りの散歩で、藤巻くんはジョギングの途中で、この川沿いの道を歩きながら少し話をするのが日課になっている。 時間にすればおそらくほんの10分程度だ。それでも毎日会っていればこんな軽口も叩かれるようになる。 心地よく頬を撫でていた風はもう完全に冷たい北風に変わり、藤巻くんの吐く息も真っ白だ。 「さとーさんの息、真っ白。」 鼻を赤くした藤巻くんが言う。 「もう年末だもんな。」 ぶら下げたスーパーのビニール袋が冷えた指に食い込んで痛い。 我慢できずに袋を手首にかけ直し、両手にはぁっと息を吹きかけた。 「さむっ。」 「さとーさん、手、真っ赤じゃないですか。」 ふいに藤巻くんは俺の手をとって、自分の両手で包み込む。 「ぅわ、冷たっ。俺の手、あったかいでしょう。走ってたから。」 「う、うん。」 熱いくらいだ。ていうか、え、なんで俺、こんなに動悸が 「あ、さとーさんの手もぽかぽかしてきた。ね?」 ふいに顔を上げた藤巻くんとバチと視線が合う。近い、やばい、近い。 「……っ。」 と、藤巻くんはぱっ。と手を離し、顔を背けた。 ? どうして 「藤巻くん、なんでそんなに赤くなってるの?」 「……っ、それ、さとーさんでしょ!ていうかあ、あんたがそんな……」 「俺が?」 「……かわいー顔、するから。」 ! 「かわ、いいとか……歳上の男に言うことじゃないだろ。」 「いいんですよ。さとーさん、可愛いもん。」 「また……!」 「もう、いいからほら、はい、手、貸して!」 「は??」 藤巻くんは強引に俺の手を握ると、そのまま自分のポケットに突っ込んだ。 「これでこっちの手はあったかいでしょ。もう片っぽは……自分でなんとかしてください。」 「……ははっ。なんとかって、なんだよ。」 「ふふふっ、なんとかはなんとかです!」 それから俺たちは、いつもの10分間を手を繋いで歩くようになった。 理由は……寒いから。たぶん。
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