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「チーズハンバーグか。いいな、食べたい。」
「美味しいんだよ。今の時期だったらクリームシチューとか、グラタンとか……、とにかくなんでも美味いんだ。」
「あぁもう、やめてください。めっちゃ腹減る。」
そういって藤巻くんは、繋いでいない方の手で腹を抱える。
「オムライスもおすすめ。ふわふわでつるんとしたタイプのやつ。」
「ゔぐっ、だめだ、やられた……!!」
藤巻くんはガクガクと膝を落とすマネをした。
「あはは。参ったか。」
藤巻くんといると笑ってばかりだ。
「『あはは』じゃないですよ。あー、絶対今日夜食食っちまう。太りやすいのに。くそー。」
「そうなの?」
「うん。気をつけてないとすぐブクブク。なのに仕事で、……。」
はた、と口を押さえる。
?
「藤巻くん?」
「あ、いや、えーっと、そうだ、同窓会?行くんですか?」
「ん?うん。同窓会ってほどでも無いんだけどね。顔くらいは出そうかなって。前の時仕事で行けなかったし。」
「そうなんスか?じゃぁ行った方がいいかもですね。たまにはパーッと昔の仲間と。」
「そうだな。行ってみようかな。」
「楽しみですね。いつですか?」
「25日だよ。」
「今月の……?」
「うん。あ、でもほんと、顔出すだけで帰ってこようと思ってるんだ。俺そんなに飲めないしね。だからここにはいつも通り来る予定。」
って、そんなこと言うの変だよな。約束してるわけでもないのに。
「あれだよな、藤巻くんこそ、クリスマス予定あるだろ?藤巻くんモテそうだし、イブも、なんならイブイブ?っていうのか?も……」
俺、何言ってんだろ。
ベラベラと喋る俺とは正反対に、藤巻くんは押し黙ってしまった。
「……なんか言ってくれよ。」
「さとーさん。」
「……なに?」
「さとーさん。あのさ……ごめん。俺、明日からしばらくここに来れないんだ。」
「……俺、なんか変な事言ったかな。」
「ちがっ、違います。ただ俺が……俺の、問題。」
そうして藤巻くんは、次の日から本当に姿を現さなかった。
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